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しかし、そんな俺の気持ちに反して、愛梨は簡単に俺に振り向いてはくれそうになかった。
愛梨の力へ向かうその気持ちはあまりにも強すぎるものだった。
さっきも俺に抱かれそうになりながら、必死で力の名前を呼んでいた。
どんなにカラダが俺に反応していても、心だけは反応してくれなかった。
そんな彼女を権力を使って傍に置けたとしても、俺は全然嬉しくない。
傍にいるのに他の男を想い続ける愛梨の姿なんて考えたくもない。
それならば、あの日のように今度はきちんとしたカタチで力を負かして、力に身を引いてもらうの賢明だ。
力が愛梨を諦めない限り、愛梨の気持ちが俺に向くことなんてあり得ないのだから。
その為には力には俺と同じ舞台に上がってきてもらう必要がある。
どんなことをしてでも俺はもう一度、力と勝負がしたい。
お互いの自信のあるものなら文句はないはずだ。
中学の時に力が一方的にに決めた勝負ではなく、今度はお互いが納得した上でなら俺も納得がいく。
案の定、あのケンカっ早く、血の気の多い力は俺のその挑発にのってきた。
既に名門池川のピッチャーとしてやっている力にとって、今、陸上に戻ることはかなり難しいことだと分かってはいる。
それでも、愛梨の為なら何としてでも力は俺と同じ舞台に上がってくるだろうと俺は睨んだ。
大切な時期、将来をかけた事をやっていることも知っている。
しかし、力にとって何が一番必要で大事なのか、俺は確認しておきたかった。
それが俺と同じなら、力は何が何でも俺と勝負する為にやってくる。
それほど、大泉グループという権力は大きいものだ。
強引に権力で彼女を奪われるくらいなら、無茶をしてでも、その勝負に賭ける……それが力だってことを俺は知っている。
あいつはギリギリの限界になると、いつもそれ以上のチカラを発揮するヤツだった。
俺はそんな限界のチカラを持ったアイツと勝負がしたい。
そういうアイツに勝たないと俺は意味がないと思っている。
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