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祐「俺はあいつとは正々堂々と勝負したいんだ。インターハイは公式な試合だからさ。」
その場所で競い合うということはかなり意味があると俺は思っている。
公式ならお互いどちらが負けても文句など言えるはずがない。
心の整理をつけるにはもってこいの場所なのだから。
翔「おまえさぁ、野球やってるアイツにそんなこと吹っ掛ける自体フェアじゃねーだろ?」
崎「そうだよ。どれだけブランクあると思ってんだよ!いくらアイツが中学の時、全国制してるって言ったって、野球と陸上選手の筋肉のつき方だって違うんだぞ?しかもアイツ、ピッチャーに転向したばかりで大変な時だってのに。」
祐「だからだよ。」
だからこそ、俺はアイツを試したい。
アイツがどこまで愛梨に本気なのかを。
野球を蔑ろにしてまでも愛梨を守ろうとする気持ちがあるのか。
その覚悟がないヤツに愛梨を任すことなどできない。
翔「おまえ、藤沢を試そうとしてんのか?」
崎「大泉……そんなことしたって水月はおまえには……」
祐「崎田……俺はさ、彼女のことをもう10年以上も想ってきたんだよ。力なんかよりもっと前からね。その彼女をそう簡単に渡せると思うか?」
少なくとも力は俺のそういう気持ちを誰よりも分かっていると思う。
だから、逃げもせずに俺に向かってこようとしてるのだろう。
翔「まぁ、その気持ちは分からなくはねーかな、俺は。ん、けどさ、俺、前から聞きたかったんだけど……そもそもおまえらってなんでダメになったんだ?」
祐「…それは……」
その時、携帯が俺のポケットの中で震え出す。
着信は秘書の小笠原からだ。
祐「すみません、ちょっと……」
俺は少し二人から離れ、その電話に出る。
祐「…なんだよ?」
小笠原はいつも冷静沈着な人間。
だが、今日のヤツはやけに慌てていた。
祐「…えっ!?」
その内容に俺はかなり動揺した。
祐「…ん……すぐに向かうよ。…あぁ…そうだな……」
電話を切った後、暫く俺は動くことができなかった。
翔「どうした?何かあったか?」
気がつくと翔先輩が俺の元へきていた。
祐「いえ……別に……」
崎「おまえ、顔色悪いぞ?」
祐「あ……ん、ちょっと急用が……」
頭の中をその事で支配された俺には先輩のその声はもう聞こえない。
翔「え……大泉?」
話の途中にも関わらず、俺は急いでその場所へと向かうのだった。
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