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止めようとして止められるなら、もう愛梨になんて近づいちゃいない。
そんな簡単な想いなら、彼氏がいるってわかってんのに『好き』とか口に出すわけない。
沙「でも…っ……私は先輩達には幸せになってもらいたいって思って…ます…」
幸せになってもらいたい?
そりゃ好きなヤツの幸せは願うのは当然だろう。
でも好きなら自分を見てもらいたい、振り向いてもらいたいと思うのが当然でもある。
翔「あのさ、そーいうのを偽善者っつーんだよ。表ではもっともらしいこと言っても、結局は隙さえあれば奪いたいって思ってんじゃねーの?」
沙「そ…そんなことないです!」
翔「じゃぁ、なんでオマエ、ここに来てんだよ?」
沙「それは水月先輩みたいに跳びたくて…」
翔「嘘だな…」
沙「嘘じゃないですっ」
翔「あのなぁ、この学校の陸上部っつーのはそこらの部じゃねーことくらい知ってんだろ?あいつも俺も一応、推薦の打診受けてんだぜ?…おまえはどうなんだよ!?」
沙「そ…それは……」
沙希が推薦の打診を受けていたら、すぐに俺達に情報は伝わっていたはず。
愛梨にだってその情報は数ヶ月前には伝えられたはずだ。
翔「俺もおまえの気持ちは分からねーこともねーよ。でもさ、少なくとも俺はおまえより正々堂々としてるぜ?」
沙「え?」
翔「俺は愛梨が好きだ。だからストレートにアイツに気持ちは伝えてある。今はさ、確かに藤沢のもんだよ。けど、これからどうなるかなんてわかんねーだろ?」
沙「……」
人の気持ちほど不確実なものはないということを俺は嫌というほど知っている。
だから、愛梨が1%でも俺に振り向いてくれる可能性があるならこの想いは持ち続けたいと思っている。
沙「でも、水月先輩は河合先輩には……」
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