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もう過去を振り返らなくても力だけを見つめていればいい。
力ならきっと愛を幸せにしてくれる。
それなのに今さら――……
どうして愛はこんなに苦しまなければいけないのだろうか。
『どんなにヒドいことをされても嫌いになれない……』
愛の心の中にはまだ祐がいるということなのだろうか。
フツーならあんなヒドい事をされたら絶対に許せないはず。
だけど愛は――……
もしかしたら、愛の心の中で何か変化が起こってきているのかもしれない。
祐に対する眠っていた置いてけぼりになっていた祐への想いが目覚めてしまった?
いくら愛が今、力のコトが好きでも、愛にとって祐は力なんかよりもっと長い間好きだった大切な人だ。
その記憶が呼び戻されて戸惑っているとしたら?
愛「…由利ちゃん……私……カラダおかしいみたい…」
由「…ん…?…どういう……こと?」
愛「…どうしてだかわかんないけど……私の……あの……あそこから……いっぱい出ちゃって…力とするトキよりも…あんな…っ…。…祐も…ね、言ってた。力じゃなくてもいいんじゃないかって……ヒドいよね、こんなの……グスッ…」
愛は目にいっぱいの涙を浮かべていた。
愛は祐に感じてしまったんだと思った。
愛の心が力へと向かっているのは事実。
だけど、祐に求められて知らず知らずのうちに愛も求めてしまった。
どんなに心が力を求めていても、その心の奥に祐という存在が残っていたのかもしれない。
祐が愛に触れたことによって引き出されてしまったあのお互いが好きだったという過去の記憶――
おそらくだが、祐はそんな愛の感じる姿を見て、もしかして自分に対する感情が残っているのではと思ったのかもしれない。
私は一瞬不安になった。
由「…愛……あんた、さっき祐のこと嫌いになれないって言ってたけど、まさか、心までもっていかれたってことはないよね?」
愛「…違うっ…違うもん。私の好きなのは力だよ。…でも……」
由「でも?」
愛「私にとって……祐はやっぱり大切な人には変わりないんだなって…」
由「…愛……」
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