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愛にとって祐はこれからも特別で大切な人なのかもしれない。
でも、『大切だから』『特別だから』といってこのままでいいはずがない。
このままじゃ力だって可哀そう過ぎる。
愛「あのね…由利ちゃん。私ね、今日あったコト、力には言わないでおこうと思う。」
愛梨のその台詞に私は耳を疑った。
由「なんで!?」
愛「ん……また力が心配すると思うし、それに…」
由「それに?」
愛「もうすぐ選手権の予選があるみたいだから。ピッチャーに転向したばかりだし、私のせいで……投げられないとかってことになったら……申し訳ないよ。私ね、どんなことがあっても……力の夢を絶対に叶えたいの。」
その愛の言葉を聞いて、私は少し安堵した。
いくら祐が『大切な人』といえども愛にとったらもう過去の人。
愛が今好きなのはやっぱり力。
愛は前を向いていこうとしている。
じゃないと、こんな時に力の甲子園への夢を守ろうとする発言なんて出てくるわけがない。
やっぱり愛にはもう力しかいないのだと私は確信した。
愛「由利ちゃん……私ね、力のチカラになりたいって思ってる…」
由「え…」
愛「私なんてチカラになれるかどうか……分かんないけどね。でも、私が彼の一番の味方でいたい……」
由「…愛……」
愛「私がね、凄くツラいトキに……力は私の傍にいてくれたでしょ?あの時みたいに……今度は私が彼を応援してあげたい…。だから……今は力には絶対に心配はかけたくない。…私ね……もっともっと力の為に強くならなくちゃって…」
愛の目にはいっぱい涙が溢れていた。
だけど、その瞳の奥には確かに力を想う気持ちが私には見えた。
私は思わず愛を抱きしめた。
由「…あんた……ホント力が好きなんだね…」
愛「…うん…大好きだよ……由利ちゃんにだって…もうあげないんだから…」
由「…分かってるよ……あんなエロ男なんて取りゃしないから安心しなっ…」
愛「…ん……」
由「…愛……あんたのさ……思うようにしな。私はあんたの決めたことなら応援するよ。力に今回のコト、黙ってるっていうなら私は何も言わない…」
間違いなく愛は力の為に強くなろうとしている。
過去と向き合い、決別してこれからも力と一緒に歩んでいく為に――
愛の力への想いは本物だ。
愛「…由利ちゃん……ありがとう……私、由利ちゃんみたいに強くなるねっ…」
由「私みたいに?…プッ…そりゃやめときなっ」
愛「なんで?」
由「私みたいになったら、力が困るだろ?」
愛「…っ……ぁ……そっか……あっ……」
由「…ちょ…あんた、それってば、どういうことだよ?」
愛「…えっ?…べ…別に深い意味は…」
慌てて私に弁解しようとする愛の顔は少しだけだけど、さっきよりも落ち着いてきているように見えた。
そんな焦る愛のおでこを私は小突いてやった。
由「あんたはさ、あんたらしさでもってやればいいんだよ。そういうあんたを力だって好きになったんだろうし?」
愛「そう…なのかな……ん……でもやっぱり強くなりたいよ。うん、ならなきゃ…」
まだ不安はある。
でも、愛が強くなろうとしているのは事実だから――…
私はこれからも二人を全力で応援しようと心の中で誓った。
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