十字架

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だから、そんな祐の気持ちを踏み躙り、裏切った私はたとえどんなことを祐にされたとしても仕方がない。 『祐とは終わったことだから…』 『力を好きになったから…』 そんな言葉で片付けられるほど、祐の私に対する想いは簡単なものじゃなかったと思うから。 酷いコトをされるほど、祐の苦しみが深いんだってことを私は感じてしまう。 その苦しむ祐の姿から私は目を背けちゃいけない。 それがずっと私を想い続けてくれてた祐に対する私ができるせめてもの償いだと思うから。 愛「私ね、祐に、この三年間は私の為に走るから傍で見ていて欲しいって言われてたんだ。」 由「…愛の為に……走る?」 愛「うん。でも、気持ちには応えられないから、そんなことはできないって思ってた。でも、考えてみたら、祐はわざわざ私の為にこの高校に来てくれた。昔の私との約束……いつか迎えにいくからって。ホントに来るなんて、もうあの日以降は思ってなかったんだけど……」 高校で再会して、祐は私にその想いをまっすぐにぶつけてくれていた。 信じてくれるかどうかって不安になりながらも。 あの日、あの県大会の日の真実を語り、そして彼の想いを打ち明けてくれた。 力を好きになった私の想いも尊重してくれて焦らすこともなく、いつも私に優しくしてくれていたのに、私はそんな祐にどう接していいのか分からず、知らず知らずのうちに彼を避けていた。 それは今考えてみると本当にヒドいことだったと思う。 祐は私の隣に力がいても、その現実に目を背けずに変わらない瞳で私を見ていてくれてた。 それなのに私は――… きっと祐は、私が祐のことを少しも見ようとしないから、あんなにも私を傷つけることをしたんだと思う。 あんな怖い顔をさせたてしまったのは私のせい。 私の知ってる祐はあんなじゃなかった。 あんな祐にしてしまったのは私の責任。 由「でもさ、愛、もう祐とのことは終わったことなんだろ?三年間見ていて欲しいったって、それに応えられないんならヘタに期待を持たせることはしちゃダメだろ。いくら祐があんたを好きでもあんたは力が好きなんだろ? だったら……」 愛「…でもね、やっぱり私がいけないんだと思う。祐のことを忘れてもいないのに、力を好きになっちゃったから……」 当時の私は、あまりに幼くて弱かった。 傍にいてくれた力の優しさに甘え、私は心地のよい彼に寄りかかってしまった。
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