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橋本「…藤沢……何を寝たボケたことを言ってるんだ?おまえは野球をする為に生まれてきたようなヤツじゃないか!それがいきなり……ん?……もしかして……おまえ……また走りたくなったのか?」
どうしても走りたいワケじゃない。
俺だってできれば野球を続けていたかった。
けど、今は絶対に走らなければならない理由がある。
力「監督……俺……今、どうしてもやらないといけないことがあるんです。……絶対に……後悔したくないんです…っ…」
俺は唇を噛み締めた。
こんなことを監督に言いたくなどない。
俺にいつも期待をかけてくれていた監督を裏切るようなことだけは絶対にしたくなかった。
けど、もし、俺が三年まで野球を続けていたら、きっと水月は俺の傍にはいられなくなる。
あの大泉グループという大きな組織のチカラで水月は祐の元に行かざるを得なくなってしまうだろう。
何より、彼女の悲しむ姿を俺はもう見たくない。
力「…監督……すみません……俺……」
橋本「……藤沢……向こうで何があった?」
こんなコト、監督になんて言えやしない。
女のコトで俺が野球を辞めようとしているなんて格好悪過ぎる。
力「…俺、今年の夏は予選だけじゃない、必ず甲子園で優勝してみせます。監督の期待に絶対に応えます!ですから……それ以上は期待しないで下さい…」
今の俺にはこれしか言えなかった。
いずれ期待を裏切るのなら、せめて俺がギリギリまでできることはやり遂げて監督を少しでも納得させたい。
橋本「……藤沢……おまえに何があったのかはわからん。けどな、それで本当におまえはいいのか?…水月クンも……納得しているのか?」
水月にはまだこのことを言っていない。
彼女になんて言えるワケがない。
いや、いずれ言うことになるのかもしれない。
けど、できるだけそれは遅らせたいと思っている。
力「…それは……」
橋本「…おまえなぁ……大事な彼女にも言ってないのか?また怒らせることになるぞ?春の試合の時もそうだったじゃないか。」
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