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春の試合――……
俺がピッチャーとして初めて登板した時、俺は彼女を驚かせたくてピッチャー転向のことを事前に彼女に伝えていなかった。
しかし、それが逆に彼女を怒らすこととなってしまった。
自分だけ知らなかったという疎外感――
でも、今度のことは違う。
彼女を思えばこそだ。
俺が野球を辞めてまた陸上に戻り400を走る――
それが水月を守る為だと知ったら彼女はきっと自分を責めるに違いない。
けど、祐に水月とのことを認めてもらう為には、俺にはもう一度アイツと走るという選択肢しかない。
祐は俺を試している。
どれだけ俺が水月のことを想っているのか。
大事な野球を……監督や仲間達を裏切ってでも、水月に賭けられるのかということを。
それくらいの想いが俺にないのなら、ずっと想ってきた大事な水月を渡せない、許婚を譲れないと言っているのだろう。
本当なら今すぐにでも祐は水月を奪い取れる。
それくらいの権力をもつグループの後継者なのだから。
しかし、アイツはわざわざ俺に同じ舞台に上がるよう仕向けた。
俺は水月とこれからもいるのなら、その祐の仕向けた勝負に絶対に挑まなければいけない。
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