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力「…監督……すみません。俺、野球が好きです!けど、それ以上に大切なものがあって…」
監督にどう思われても仕方がない。
西野に言わせれば俺はヘタレだし情けないヤツかもしれない。
けど俺の未来に水月がいないなんて考えられない。
今、俺が選ぶべきものは野球ではない。
橋本「……水月クンか……」
力「…はい……」
橋本「…なるほどな。まぁ、おおよそ検討はついていたけどな。まったく……おまえは彼女が絡むとなると……」
監督は大きくため息をついた。
監督に呆れられても仕方がない。
力「監督の期待に添えなくて悪いと思っています。だけど俺は…」
橋本「…藤沢……今の段階で俺はおまえが野球を辞めるというのは納得できん。しかし、水月クンの為に好きな野球を辞めないといけないだなんて、それはよほどの理由があってのことなんだろう?」
監督は俺を心配しているようだった。
力「…監督……」
橋本「もし俺でよければ、それが何なのか……教えてくれないか?」
監督は真剣な顔で俺を見ていた。
橋本「…頼りにならんか?」
監督に言ったところで事態が変わるわけではない。
でも、監督が俺を本当に心配してくれているのは分かる。
こんな事、普通なら浅はかでバカだと批判されても仕方がない。
だけど、監督は逆に俺に耳を傾けようとしてくれている。
こんないい監督を裏切るのなら、俺はちゃんと理由を言って去るべきじゃないのか?
恰好悪くても情けなくても俺は監督に説明すべきだ。
力「…監督……俺……インターハイで400を制したいんです。」
橋本「…400?…インターハイ…で…か?」
力「…はい……」
いきなりのその俺の発言にさすがの監督も驚いたようだ。
橋本「それは水月クンと一緒に走りたいからか?」
力「…そういうのことではないんですが…」
橋本「おまえらしくもない返事だな。ん?ハッキリ言ってみろ。」
池川に帰ってきて以来、誰にも話せずに抱え込んでいた俺のこの思い。
監督に促されるまま、俺は吐き出すのだった。
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