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橋本「…そんな事があったとは。それはおまえもたまったもんじゃないなぁ…」
水月が俺の元親友の許婚であったこと。
その婚約を解消するために同じ舞台での勝負を挑まれているということ。
そして、俺がそれを彼女に言わずに片付けようとしていること。
俺は休暇中にあった全ての出来事を監督に話した。
力「…俺、情けないんっすけど、本気で彼女に惚れてて……誰にも渡したくないんです…」
橋本「何が情けないことがあるか。あんな風におまえの為に我慢して待っていてくれて、応援してくれて……。坂田ともよく話しているがいい子じゃないか。」
まさか坂田とそんなことを話しているとは驚いた。
つーか、水月は俺には勿体ないくらいの彼女だと俺自身も思っている。
力「監督……だから俺、この夏は監督の為にも皆の為にも死に物狂いで投げ切ります。ですから来年は……」
橋本「…藤沢……俺はおまえに野球を辞めさせないっ…」
その先の言葉を言わせないように監督はピシャリと言い放った。
(辞めさせないって……じゃぁ、水月を諦めろってことか?)
力「監督!俺はっ…」
その時、監督は俺にとんでもないことを提案してきた。
橋本「…藤沢、おまえ……両方やってみろ!」
(は?両方って?野球と陸上と……?)
力「…か…監督っ!そんな無茶な……」
あり得ないその選択肢に俺は度肝を抜かれていた。
橋本「藤沢……おまえはいつも皆に言ってたじゃないか。『やりもしないのにできないなんて言うのはおかしい』と。前の三年も今の三年もとにかく諦めが早くて俺は困っていた。だが、それに入部早々カツを入れたのはおまえだろう?その張本人が、やりもしないことを最初っから諦めてどうするんだ。」
確かに俺はやる気のない先輩達に偉そうにそう言い続けてきた。
しかし、俺が目指すのは野球と陸上の頂点。
そんな事できるだろうか。
いや、どう考えたって無謀過ぎる。
力「…監督……俺、向こうで400のタイムとってみたんです。けど中学のタイムより悪くて。しかも自分でもなんていうか、走りづらさを身体的にも感じてて……正直……自信が…」
祐にも言われたが、あんな走りで、あんなタイムで祐とやり合おうなんて十年……いや、百億年早い。
力「所詮、中学の全国優勝は過去の栄光ですよ。高校のインターハイはそんな甘いもんじゃない。そのくらい俺、理解ってますから。」
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