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しかも俺にはかなりブランクがあって、更にカラダは既に野球向きになってしまっている。
それを今から調整するとなるとかなり大変だ。
一年かければ何とかなるかもしれないが、それでも結構キツいものがある。
それを同時進行だなんて無謀にも程がある。
橋本「それでも……俺はおまえが野球を辞めるコトは認めん。どうしてもおまえが400をやるっていうならそれは止めはしない。だが野球は続けろ!」
監督の意志もまた固そうだ。
橋本「おまえならできるはずだ。水月クンの為なんだろ?彼女を守るんだろ?それに……彼女はおまえが野球を辞める姿を見たいと思うか?」
水月もまた俺が野球を辞めるコトは大反対だろう。
理由なんかを知ってしまったらまた泣かせてしまうに違いない。
だけど俺にはこうするしか――…
橋本「とにかくやってみろ。俺で協力できることなら何でもしてやる。陸上部の顧問に協力を頼んでやっても構わん。だが野球は辞めるな。絶対にだ!俺は許さんぞ?…分かったな?」
久しぶりにその威圧感を見せ監督はそう言い放ち、その場を去っていった。
それにしてもとんでもないことになってしまった。
祐に勝負をふっかけられたあの時、俺は野球はこの夏で引退して、その後は陸上一本に専念するつもりだった。
それなのにまさか監督に両方やれと言われるとは――…
今でさえ、野球の練習を終える時間がかなり遅いというのに、いつどうやって400の練習に時間を割けるというのだろうか。
だが考えてみたら、もし俺が野球を続けていたら、水月に彼女が祐の許婚だってことを感づかれずに済む。
うまくいけば、彼女を一切傷つけなくて済むかもしれない。
俺さえ腹をくくれば━━…
しかし、そんなに簡単に事が進むだろうか。
しかも相手はあの祐。
けど、監督が引退を認めてくれないとなると、そうする選択肢しか俺にはないってことになる。
気の遠くなりそうなその監督の提案で俺は頭がおかしくなりそうだった。
とりあえず、今、俺がすることは――……
選手権の予選突破だ。
ひとつずつ片付けていくしかないだろう。
時計を見ると、既に11時を廻ろうとしている。
(…やべっ……水月に電話する時間越えちまってる…)
俺は彼女に電話する為にそこを後にした。
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