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GWも終わり、俺達は県大会の予選に向けての調整に入っていた。
愛「先輩、ちょっとさっきのって流れてません?」
あろうことかインターハイ覇者のこの俺の跳躍に愛梨がケチをつけてくる。
翔「はぁ?俺の天才的な跳躍に何か文句あんのか?」
愛「文句というか……そう思ったから…。自分では分からないかもですけど、もうちょっと踏み切り位置を何とかしたほうがいいような…」
俺はマットから飛び起きると、バーを直す愛梨へと近寄った。
翔「へぇー……おまえが俺にそんな偉そうなアドバイスできるようになったとはな……」
愛「だって、先輩、今年はラストのインターハイでしょ?坂田先生は先輩のコト放ってるみたいですけど。でも、先輩、ちょっと前より跳び方がヘンだから直した方が良くないかなって。それに……こんなコト、私以外に誰も言ってくれないかと思って…」
確かに今日の俺は飛びにくさを感じてはいた。
(つーか、誰のせいだと思ってんだよ……)
愛「じゃぁ、もいっかい跳んでみてくださいね。はい、スタート位置に戻って…」
今日の俺にはかなり邪念が入っている。
跳躍時にこんなことを考えていたら跳べないことくらい分かっている。
だが、あの日のことが気になって仕方がない。
(…ったく……愛梨のヤツ……人の気も知らねーで……)
俺はスタート位置についてバーを見据えた。
だけど、重い脚はなかなか動こうとしてくれない。
そんな俺にマット近くにいた彼女が近づいてきた。
愛「…どうしたんですか?体調悪いとか?」
翔「…ん……あのさ……休憩しねーか?」
愛「え?まだ始めたばかりじゃ……」
まだ跳躍を始めて10分も経ってない。
翔「…いいんだって。のらねートキに無理にやっても俺は跳べねータチだからさ。……さっ……行くぞ?」
そう言って俺は彼女の腕を強引に引っ張る。
愛「…ちょ……先輩?」
そして俺は部室から少し離れた自販機のある方へと向かった。
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