彼女のために

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あの日――…… 俺は愛梨が体育倉庫で大泉にキスされていたのを目撃してしまった。 そこには今までに見たことのないほど放心状態となった愛梨がいた。 俺は彼女を大泉から掻っ攫い、俺と愛梨が出会ったあの森へと向かった。 彼女は正直俺が手をつけられる状態でなかった。 俺は、その時ちょうど学校に来ていた愛梨の幼なじみの由利とか言う暴力女に彼女を任せることにした。 そして、俺は崎田とともに大泉と話をしに行ったのだが、肝心なところでアイツに電話が入り――… それ以降というもの、俺は大泉を捕まえられずにいる。 翔「なぁ……今日は大泉……学校に来てたか?」 その俺の質問に一瞬、顔を強張らせた愛梨だったがすぐに普通の顔に戻り、 愛「…あ……うん……来てなかった…かな…」 崎田からも大泉が学校へ来ていないコトは聞いてはいたのだが、俺はわざと愛梨の口からそれを聞いて彼女の様子を伺っていた。 あの日以来、学校へ一度も顔を出していない大泉――― あの日、俺と崎田と三人で話している最中にかかってきた電話は、かなり緊急を要していたようで、話の途中だと言うのにアイツはその電話を切った直後すぐにその場を後にした。 翔「…そうか。どうしたんだろうな……」 愛「…ん……どうしたんでしょうね…」 翔「おまえと顔合わすのが……気まずい……とか……?」 愛「………」 さすがにマズい返しだったのか愛梨は黙ってしまった。 しかし、大泉はそんなことで学校を休むようなヤツとは思えない。 けど、アイツがいない間に愛梨が少しずつ落ち着いてきたようだからある意味有難いのだが―― 何より俺は彼女のこれからのことを気にしていた。 もう直前に迫ってきている地区予選。 またバーを越えられなくなるんじゃないのかと実はハラハラしていたりする。
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