彼女のために

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愛「…先輩……私、ホントに大丈夫です…」 俺の顔を見ると彼女は少し悲しそうな顔で笑った。 愛「先輩、私ね、祐とちゃんと向き合うことにしたんです。」 由利ってヤツからもその話は聞いていたが、愛梨からは初めて聞く彼女のその決意―― 愛「私が…祐をあんな風にしちゃったから。だから…あの日、彼にどんなことされても仕方なかった…」 (どんなことされても…って……もう少しで最後までされそうになったってのに、それを仕方ないって……) 翔「けど、おまえ……あんな…」 愛「…先輩……私ね、正直…凄く驚いたし怖かった。でも…これは私が祐とのことをうやむやにしようとした罰だと思うから…」 (罰?) 翔「ったって、もう大泉とのコトは終わったことだったんだろ?」 二人が以前、そういう仲だったというのは聞いていた。 しかし、もう過去のコトとして愛梨は片付けていて、今、藤沢とつきあっているのが現実。 見ていて悔しいくらい彼女は藤沢のコトを想っていて、俺の取り入る隙なんて全くない。 それをこの前のGW中にも散々見せ付けられた俺は一人撃沈していた。 愛「…ううん。祐の中では……まだちゃんと終わってなかったみたいだから…」 過去、愛梨と大泉の間に何が起こったのか俺は知らない。 以前、彼女が跳躍を思うように跳べなかった時に『ある人のことを想いながら跳んできた、でも裏切られた…』と言っていた。 おそらくそれは大泉のコトなんだと思う。 ずっとその詳細を聞きたいと思っていたのだが、過去のことを根掘り葉掘り聞くのもどうかと思い、俺は何も聞かずにいた。 しかし、この前のようなことがあり、俺は思い切って、大泉の方からその隠された過去を聞き出そうとして―― ところがあの日、これからという時にいきなりヤツに電話がかかってきてしまい、また聞けずじまいになってしまった。 今、目の前にいる愛梨に聞いたら答えてくれるのかもしれない。 だけど、彼女に今それを聞いてもいいものだろうか。 愛「先輩……私がね、彼を信じきってあげられなくて彼を傷つけた。裏切ったのは私の方だから…」 愛梨が……大泉を傷つけた? 大泉が裏切ったんじゃなくって愛梨がヤツを裏切ったってのか? だから、責任を感じているということなのだろうか。 全然掴めない。 いろいろ聞いてみたいことが俺には山ほどある。 けれど、俺は今の彼女に何をどう聞けばいいのか正直分からない。 やはりあの由利というヤツに聞くのがいいのだろうか。 愛「でも、やっぱり私は……力が……彼が好き……だから、このことは…自分で片付けようって思ってます。」
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