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愛「…そういえば、お祖母ちゃん。お祖母ちゃんが昔、私によく使わせてくれてた水色のお茶碗って覚えてる?」
祖母「あぁ…覚えてるよ。」
愛「この前のお茶席で使わせてもらったお茶碗……それ…ね、お祖母ちゃんが持っていたのと凄く似てて…」
あの日のお茶席で私が使わせてもらったそのお茶碗。
私はそれを目の当たりにした時、凄く驚いた。
あんな珍しい色のお茶碗――……
愛「あのお茶碗って……もしかして?」
祖母「それは……源さんと一緒に焼いた思い出のものだろうね。」
やっぱりそうだった。
何か意味のあるものじゃないかと思ってたけれど、まさか一緒に焼いていたものとは――
愛「思い出の……って?」
祖母「あれはね、源さんと将来を誓い合った日に出来上がったものでね。当時あれが言わば二人の中での婚約のしるしだったんだよ。」
愛「え?婚約のしるし?」
祖母「そう。実はあのお茶碗……並べると文字になる部分があってね。」
そんなからくりがあるとは思いもしなかった私は更に驚いた。
愛「それって何て文字になるの?」
祖母「ま……今度、愛梨にそのお茶碗渡すから、持っていって並べてみるといいよ。」
愛「え?私が?」
祖母「力君と愛梨がそういう文字で結ばれているとお祖母ちゃんは信じてるから…」
お祖母ちゃんはそっと私の手を取ると頷いた。
愛「…分かった。今度、力の家に持っていってみるね。だから、早くお祖母ちゃん、退院してよ?」
その文字がどういうものか私も早く知りたい。
祖母「ん、お祖母ちゃん頑張るからね。……で、源さんは今はどうしてるんだい?」
その質問に私は固まってしまった。
真実を伝えることはあまりにも酷過ぎる現実――
祖母「そうか……もう亡くなったん…だね?」
私の表情からすぐにお祖母ちゃんはそれを察した。
祖母「…そうか……源さんは逝ってしまったんだね。でも……生きてるうちに……一目でいいから会いたかった…」
(……お祖母ちゃん……)
きっと、凄く深く源さんのコトをお祖母ちゃんは愛していた。
私にもまた愛する人がいる。
だから、そのお祖母ちゃんの気持ちが痛いほど伝わっていた。
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