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祖母「…愛梨……こっちにおいで…」
お祖母ちゃんは私をベッドの方へと呼び寄せた。
そして、私がそこに座ると、お祖母ちゃんは私の手をそっと握った。
祖母「……愛梨……昔はね、どんなに好きでも結ばれないことが殆どだった。けど、今は違う。愛梨は……好きな人とは絶対に離れたらいけないよ?」
お祖母ちゃんから伝わる手のぬくもりに私はお祖母ちゃんの私への愛情を、そして源さんへの想いを感じ取った。
愛「うん。私ね、力のコト……ホントに好きなの。だから今は離れているけど、卒業したらもうずっと一緒にいたいなって思ってる。」
祖母「そんなに力君が好きなんだね、愛梨は。」
愛「…うん。私……力じゃなきゃダメみたい。」
当たり前のように傍にいた彼がいない日々。
連絡を取ろうと思えば取れるし、会いにいこうと思えば会える。
でも、なかなか今はそう一緒にはいられない。
当たり前のように一緒にいたあの日々を早く取り戻したい。
祖母「…見てみたいなぁ……力君……」
お祖母ちゃんはきっと力に源さんを重ねているに違いない。
(…あっ…そういえば……)
愛「…えっとね……力の写真あるかも。この前、一緒に撮ったんだけど見る?」
それは、この前のGWの時に水族館で撮った写真だった。
私は携帯を取り出すとその時の画像を探してお祖母ちゃんに見せた。
祖母「…あっ……この背の高い……?…源さんに……面影がある……」
お祖母ちゃんはその画像を愛おしそうに見つめていた。
(やっぱり……似てるんだ。力のお祖父ちゃんと力って…)
そういえば遺伝って一世代おいて伝わるとか聞いたことがある。
もしかしたらそういうので似ているのかもしれない?
愛「じゃぁ、今度、力が帰ってきたらお祖母ちゃんに会わせてあげる。」
祖母「本当かい?」
愛「うん。あ……でも、選手権終わってからになるけど。なんかね、優勝するとかって張り切ってるの。けど、落ち着いたら絶対にお祖母ちゃんに会わせるから。だから元気で待っててよ?」
祖母「ん……愛梨、ありがとう。お祖母ちゃん、楽しみに待ってるよ。」
その嬉しそうなお祖母ちゃんを見ていたら私までも嬉しくなってしまった。
愛「…あ……でもね、甲子園出られたらTVにも出るだろうからそっちが早いかも…」
祖母「そうだね。それが一番早くに力君を見られるね。一緒に見ようかねぇ…ふふ…」
愛「うんっ」
そんな初恋の人の面影残る力の写真を見続けるお祖母ちゃんは恋する乙女そのものだった。
(TVじゃなくて、生で彼を早く見せてあげたい。お祖母ちゃん、きっと……連れてくるからね…)
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