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柱を避けるようにして観葉植物越しにその人を見ると、そこにいたのは━━
(……あれって…)
お母さんと話していたその人は、なんと、さっき、お祖母ちゃんの部屋から出てきた男性だった。
私のバッグを拾ってくれた、あの人だ。
だけど、あの人は一体誰なのだろうか。
さっきは慌ててしまっていて、あまり確認できなかったけれど、その人はおそらく70歳から80歳くらいの人。
白髪まじりのその男性は凄く品もある感じだ。
(どこかのお偉い人なのかなぁ…)
それにしてもお母さんにこんな知り合いがいたとは。
そういえば、さっき、あの人、私のコトも知ってるような口調だったし、もしかしたら私も以前に会ったコトがあるのかもしれない。
私はその場に出て行こうかと思った。
だけど、どうも出ていけるような雰囲気ではなさそうで――
愛母「…それは……もう……」
老人「……チヨさんにも……が………私は……諦めきれない……」
はっきりと詳細までもは聞き取れない。
だけど、今間違いなく『チヨさん』って言ったのは聞こえた。
そういえば、私とさっき話した時もあの人はお祖母ちゃんの名前を口にしていた。
ということは、あの人はお祖母ちゃんの知り合いでもあるのかもしれない。
そんなことなら、さっき、お祖母ちゃんと話した時に、あの人のことを聞いておけば良かった。
そんなことを思っていたら思わぬ会話が聴こえてきた。
愛母「…本当に困るです……それに……愛梨には……本当に好きな人と……」
(…えっ?…今私の名前が出たよね?好きな人……え……なん…なの…?)
本当に好きな人――
それは力のこと…だよね?
でも、なんでこんなことをお母さんとその人が話しているのか理解できない。
私の頭は段々と混乱していく――…
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