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私はようやく思い出した。
(そう……だったんだ。あの人…誰かに似てると思ったら…)
あの人は、祐のお祖父さんだ。
あの笑った表情――
誰かに似ていると思っていた。
それはきっと身近な人。
あれは祐だったんだ。
祐は話さないと少しクールに見えるけれど、笑うと凄く優しい顔をする。
切れ長のその祐の目――……
さっき、お祖母ちゃんの病室の前で会った時、私はお祖父さんがかなり年配だと言うのに、ちょっとドキッとしてしまった。
紳士的なあの雰囲気はまさしくお祖父さん譲り。
間違いない。
あれは祐のお祖父さんだったんだ。
でもどうしてお母さんとその祐のお祖父さんがこんなところで話をしているのだろうか。
しかも、今の話って――
どういうことなのか意味が分からない。
私にお見合い話を持ってきたってこと?
でもまさか、祐がその相手ってことは絶対にあり得ないし。
愛母「…大泉さんっ……愛梨のことは諦めてもらえませんか?あの子には関係のないことじゃありませんか。あの子は……祐君に傷つけられて……。…もう……あんな愛梨を見たくないんです。……やっと……あの子は……」
突如放たれたそのお母さんの言葉。
私は耳を疑った。
(…え……ちょっと待って…?祐に……傷つけられた…って……あの時のコトを言っているん……だよね?でも私、そんなコト、お母さんに言ったことなんてないはずだけど……?)
確かに私は中学二年の時の県大会で祐が私にとった態度に凄く傷ついた。
そして、そのショックで翌日は学校にも行けず休んでしまった。
その後もそれが凄く響いて跳躍もできなくなってしまったりかなり苦しんだりもした。
でも、そんなことをどうして祐のお祖父さんとお母さんが話すのか全く分からない。
もう何年も前の話だし、それに私たち子供のそんな恋の話なんて、どうして今さら二人が話す必要なんてあるのか。
何より、お母さんはどうしてあんなに必死になって声を震わせているのか。
(…私……)
その瞬間、私の耳にとんでもない言葉が入ってきた―――
祐祖父「…水月さん、いくら昔の約束とはいえ、約束は約束。愛梨ちゃんは祐の正式な許婚……今さらそれを……」
一瞬にして私の周りの空気が止まった。
(…えっ…?今……何て?…確か……あの人……私のこと……祐の『許婚』って…)
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