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何かの間違いだと思った。
私の頭の中をいろんなことが飛び交い、それを収拾することができない。
確かに二人の間では将来結婚するとかって言っていた。
そして祐もその幼い頃の約束から私を『婚約者』だと言っていて━━
けど、こんな風に正式な感じでは知らされてはいない。
今まで誰からも聞いたことがないその信じられない事実。
(私が……祐の……許婚?)
だとしたら、もっと前にお父さんかお母さんからちゃんと聞いていても不思議じゃない。
それに祐だって、もしこのことを知っていたのなら彼なら言ってくれていたはず。
そして事前にそのことを私に言ってくれていたら、中学二年の時にあんなに苦しむことなんてなかったかもしれない。
それなのにどうして祐はそのことを言わなかったのだろうか。
私は祐のお祖父さんが放ったその言葉に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
その時だった。
「…愛梨?」
振り向くとそこには見慣れない私服姿の祐が立っていた。
愛「……祐………」
あの日以来だった。
祐とはあれから一度も顔を合わせていなかった。
GW後、同じクラスだし嫌でも教室で顔を合わせるんだろうなと思っていた。
でも、どうしてなのか、GWが明けてもう一週間も経つというのに祐は学校に来ていなかった。
その祐が今、私の目の前にいる。
(……ホンモノ?)
思わず、私は祐の顔を覗き見た。
祐「…どうしたの?そんなに俺の顔見て……なんかついてる?」
そう言って笑う祐の姿はやっぱり本物だ。
愛「…ぁ……祐……どうして…こんなところに?」
祐「…あぁ……母さんの見舞い……なんだ…」
(……お見舞いって……)
愛「え?お母さんの…?」
祐「母さん……ここに入院しててね……」
愛「…えっ……」
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