運命

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本当であって欲しくなかった。 事実として認めたくないし受け入れられそうもない。 私は戸惑っていた。 祐「…愛梨……俺もね……最近まで知らなかったんだ…」 愛「…え……」 祐「…祖父さん達が決めたんだってさ。愛梨の祖父さんと俺の祖父さんがね、昔、約束したんだ……」 私のお祖父ちゃんは私が小学生の頃に亡くなった。 幼い頃のことだから、もう殆ど記憶がないけれど、でも、お祖父ちゃんが私を凄く可愛がってくれていたのは覚えている。 そのお祖父ちゃんが祐のお祖父ちゃんとそんな約束をしていたなんて。 でも、二人のどこに接点があったのだろうか。 私は祐のお祖父ちゃんなんて過去に一度も会ったことがない気がする。 愛「…そんなの……私、誰からも聞いたことないんだけど……」 そんな話があったのなら、どうしてお祖父ちゃんはもっと早く私にその事実を教えてくれなかったのだろうか。 お祖父ちゃんは私が祐のことを好きだったことを知っていたはずなのに。 祐「俺の祖父さんの話によると、二人は同郷だったらしくてさ。大人になってからも仲良かったみたいなんだ。」 愛「同郷って?」 祐「あぁ、二人は幼なじみだったらしいよ。しかも親友とかって…」 愛「…私……初めて聞いた……」 祐「…そうなんだ。俺はそれは知ってたんだけどね。で、二人の間にはいろいろあったらしくてさ……」 愛「…いろいろ?」 祐「ん、俺もよくは知らないんだけどさ。でも、祖父さんいつも言ってた。愛梨のお祖父さんには『借り』があるって。」 愛「借り?」 祐「うん。愛梨のお祖父さんには凄く世話になったってね。だからその孫娘の愛梨のことも凄く気にしていたらしくて。だからなのか、祖父さんは愛梨を手元に置きたいみたいなんだ。」 だったら、大切な親友の孫がそんな約束に困ることなんて勝手に決めないで欲しかった。 愛「…祐……私、そんなお祖父さん同士の話で決められた将来なんてやだよ…」 祐「…ん……そうだよね。やっぱり愛梨は俺となんて考えられないよね?」 そう言って祐は悲しそうに笑った。 (…祐……ゴメンね。もう少し早ければ、いい返事ができたのかもしれない。でも……もう遅すぎるよ…) 愛「…祐……ごめん……私……」 祐「謝らなくていいよ。分かってるからさ。あの日、愛梨を抱こうとした日に……愛梨の気持ちはもう充分理解ったから……」 あの日……私は祐に凄く酷いことをされた。 力にもされたことのないその行為で私は祐に何度も何度も絶頂へと導かれてしまって―― 祐「…ごめん。俺、あんなコトするつもりなかったんだ。けど、あんなにも力を想うおまえを見たら……悔しくて……。あんなにも俺に感じてくれてるのに、なんで力じゃないとダメなんだって…」 祐は苦しそうにその思いを語った。 後悔に満ちた祐の言葉に、私は彼の私への想いの深さを、そしてあの日私にとった行動を彼が凄く悔いていることを感じた。 祐「凄く…後悔した。本当にごめん……あんな酷いことして…」 膝に握りこぶしをぎゅっと押し付けるようにして目を閉じる祐の姿。 そんな祐を見た私は知らず知らずのうちにその彼のその手を握っていた。 祐「…愛梨…」 祐が驚いた顔で私の顔を見つめる。   愛「祐は悪くないよ……私が…いけなかった……」 祐「…え……」  愛「…私が祐を裏切ったから……私が祐を信じなかったから…」
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