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私があの時、もっと祐を信じてあげられていれば、もっと大人だったら祐をこんな風に傷つけずに済んだ。
愛「…祐……祐は何も悪くないよ……だからそんなに思いつめないで?」
もう彼との未来は考えられない。
でも祐は私にとってこれからだって特別な存在であることには変わらない。
それほどまでに私が好きだった人。
その人が苦しむ姿をもう見たくない。
愛「…私…大丈夫だよ?」
あの日のことは私の中ではもうなかったことにしたい。
じゃないといつまでも祐が苦しんでしまうし、私も前を向いて進んでいけない。
その時だった。
……フワッ………
愛「…ゆ……祐?」
祐が私の背中に腕を回し、そっと抱きしめた。
祐「…ごめんな……愛梨……」
耳元から聞こえてくる祐のその震える声に私は初めて彼の弱さを感じた。
(……祐……)
そして私の腕もまた彼の背中へといつの間にか回っていた。
愛「…祐……ごめんね……私のせいで。いっぱい…いっぱい……祐を傷つけたんだよね?」
……謝りたかった。
祐は何も変わっていなかったのに。
私への想いも。
私が彼を信じられず、裏切り、そして違う人を選んだのだから。
愛「…ごめんね……」
祐「…違うから……愛梨が悪いんじゃない……悪いのは……俺だから……」
愛「…ううん……私が子供だったから……もっと大人だったら…。私……もっと大人にならなきゃ……」
その時、祐が私をそっとその腕の中から出した。
そして私の額に彼の額をつけるようにして覗き込むと少し笑って――
祐「…そんなことないんじゃないかな。もう今は立派な大人だと俺は思うよ?……だって愛梨……あんなに……感じるようになってたしね…クスッ…」
いつの間にか祐は悪戯な顔で私を見ていた。
愛「…ゆ……祐のバカっ…」
私は思わず祐の胸をドンッと押した。
その瞬間、祐が私の押したその手を握りしめて――
祐「そういう愛梨の顔……俺、凄く好きだな……」
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