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あの頃の祐はこんな風に簡単に好きだなんて言ってくれなかった。
でも、傍にいるだけで祐の優しさや私に対する想いは伝わっていた。
だけど、やっぱりその『好き』という言葉でもって祐の気持ちを伝えてほしかった。
そうしたら、もしかしたらあの時、祐を信じられたのかもしれない。
愛「…気持ち……もっと早くに聞きたかったよ…」
祐「…そうだね。もっとちゃんと気持ち伝えていれば良かった…」
視線が交わると祐は私を抱き寄せた。
祐「…愛梨……俺……おまえが好きだよ…」
突然耳元で囁かれたその甘い声に思わず私はドキリとさせられた。
それはずっと祐に言って欲しかった言葉。
時間を戻せるのならあの頃に戻りたい。
でも、もうそんなことは私にはできない。
ずっと欲しかったその言葉を得ることができたのにそれを撥ね退けなければいけない。
そんな日がくるなんて思いもしなかった。
引き寄せた体をそっと離すと祐は至近距離で私を覗き込んだ。
祐「やっぱり……俺じゃ……ダメかな…?」
切なさそうに私を見つめる瞳は私を捉えて離さない。
愛「…祐……」
初めて出逢った時に惹かれたその瞳に今もなお私は弱い。
祐「…俺の方が絶対、力より愛梨を幸せにできると思うんだけどな…なんてね。」
そういうと、祐は名残惜しそうに私の体を離してくれた。
祐「…力は愛梨のことを大事にしてくれてるんだよね?」
愛「…うん……凄く……」
祐「…そっか……」
そういうと祐は私から視線を外し遠くの方に目を向けた。
祐「…やっぱ……遅すぎたのかな……」
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