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祐「遅くなったね。もうこんな時間か…」
いつの間にかもう辺りはすっかり暗くなっていた。
愛「…うん…そうだね。あ……祐……学校はいつ来るの?」
考えてみれば祐はもう一週間以上も学校に来ていなかった。
祐「…そうだな。母さんのこともあるから何とも言えないけど。まぁでもそろそろ行かないといけないと思ってはいるんだけどね。」
そういえばさっき祐が言ってた。
祐のお母さんはあまり長くないと。
幼い頃、私は祐のお母さんには凄く大事にしてもらった。
そしてその記憶は今もまだ残っている。
愛「…祐のお母さんに……会いたいな……」
きっと今もあの優しい笑顔は変わらないはず。
でも、私のことなんて覚えているのだろうか。
祐「…母さん……きっと喜ぶだろうな。そんな風に愛梨が言ってくれてるの知ったら。愛梨に凄く会いたがっていたからね…」
愛「…そう……なの?」
祐のお母さんもまた私のことを覚えてくれているということが嬉しかった。
愛「じゃぁ……私……会いにいっても……」
祐「でも……ごめん……。もう愛梨は母さんには会わない方がいいと思う…」
愛「…どう…して……?」
祐「母さんさ……俺と愛梨が一緒になるって、今でも信じてるんだ…」
それはもう祐のお母さんと会えないということを語っていた。
祐「俺、高校卒業と同時に大泉の後継者になって愛梨と結婚することになってるんだよ。母さんは愛梨の花嫁姿を見たがってたから…」
私は、祐だけじゃなく、祐のお母さんも裏切ってしまっていた。
愛「…ごめん……祐……」
謝っても仕方がない。
だけど、今の私には謝ることしかできない。
祐「…仕方ないよ。そういう運命だったんだ、俺たちは…」
愛「…でも……」
祐「母さんにとっても運命だったんだよ。ん…近いうちに別れはくる。だからそれまでは夢を見させておいてもいいよね?」
祐のお母さんと交わしたあの約束――…
それを信じて待っていてくれたというのに私は――…
祐「…愛梨……」
祐に引き寄せられて気づいた。
知らず知らずのうちに私の頬に涙が零れていた。
祐「…泣くなって……」
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