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祐は私が落ち着くまで背中をさすってくれていた。
祐「…愛梨……ありがとう…母さんの為に…」
あの日のことなど信じられないほど祐のその腕の中は温かった。
その温もりが心地よくて、私は思わず目を閉じてしまう―――
(…力……ごめん……今だけ……だから……)
祐「…愛梨……ごめんな。泣かせて……傷つけて…」
ゆっくりと顔を上げればそこには祐の顔があった。
祐「…泣き虫だな……」
そう言って祐はしなやかなその指で私の涙を拭った。
祐「…ん……もう笑ってくれないと俺もツラいよ。今から母さんのところに行かなきゃいけないのに……演技大変なんだって…ハハッ…」
祐はお母さんとの別れのその日まで自分を偽っていかなければならない。
そのポーカーフェイスを崩すことなく――
愛「…私……何もできなくて……でも…何かしたい…けど…」
祐「愛梨、おまえはただ笑ってればいいよ。力のことだけ考えてればいい。」
こんなにも祐を不幸にしてしまった私にそんな権利があるのだろうか。
愛「…そんなの……私…そんな…」
その時だった。
祐が私の顔を覗き込んで、
祐「じゃぁ、俺と結婚する?」
愛「…え……」
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