運命

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祐「……愛梨の笑う顔が……また見られて良かったよ…」 またこんな風に顔を合わせられるなんて思ってもいなかったから私もホッとしていた。 愛「私も。祐と話せて良かった。あ……学校で待ってるから…」 祐「ん……そうだね。部活も行かなきゃな…」 愛「…うん……部活も……あ……あのね……祐……、勝手かもしれないけど、私、祐の走る姿……高校卒業するまで見続けたいって思ってるんだけど……いい?」 祐「えっ?」 愛「祐、前に言ってたよね?三年間走りを見て欲しいって。私ね、それ言われた時、そんなことできないって思った。だって祐の気持ちに応えられないのに、そんな思わせぶりなことしちゃダメだって。でも、今は心から祐の走る姿を見たいって思ってる…」 祐の気持ちに応えることはできない。 だけど、私は彼の走りを見たいと思っている。 その姿をちゃんと刻み付けておきたい。 祐のその走る姿を忘れたくないから――… 祐「…愛梨…おまえ……」 愛「だから……また祐の走り……私に見せてくれる?」 そんな私の頭の上に祐は手をポンッと置いた。 祐「…嬉しいよ……ん……俺の走り…ちゃんと見ててくれるんだ?」 愛「うん。でね、もし嫌じゃなかったらでいいんだけど……祐も私の走りも……見ててくれない?」 勝手過ぎるお願いかもしれない。 でも私は祐に私の走りを見ていて欲しかった。 祐を裏切ってまでも選んだ力への想いが本物だということを信じてもらうために。 私はその400を走ることでそれを証明してみせたい。 そんな私を祐はジッと見ていた。 愛「…あ…やっぱり……こんなの…ダメ?」 祐「…ん……愛梨が俺の走りを傍で見ててくれるのなら……俺も見るよ。俺もさ、おまえの走る姿、できる限り見続けていたいからさ…」 祐が見ていてくれるのなら絶対に頑張れると思った。 愛「…ありがとう。祐…嬉しい。私…いい走りするから…」 祐「…約束な?」 ようやく訪れたその瞬間だった。 新たな二人の約束――… それに向かって進んでいくはずだった。 それなのに、まさかあんな事が起こるなんて、この時の私は思いもしなかった。
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