兄の思い

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愛梨の家に着いた俺は自転車を留めた。 家の中の明かりはついているようだ。 俺は彼女のそのバッグを引っさげ、玄関のインターホンを鳴らした。 ……ピンポーン…… 『…はい……』 すぐにインターホンから声が聞えてくる。 その声は聞き覚えのある低い声。 (げっ……兄貴かよっ……) よりにもよって兄貴が出るとは。 一番出て欲しくなかったが、出てしまったものは仕方がない。 翔「…あ…俺……河合だけど……」 インターホン越しにそういうと、洋太はいつものように俺を冷たくあしらうような言い方で、 洋「…おまえかよ……あ?…愛梨ならいねーけど?」 愛梨はまだ病院から帰ってきていないようだった。 翔「…そっか。…いや、実はな、アイツの忘れ物を届けにきたんだが…」 そう言って、おそらく向こうからは見えているだろうカメラに向かって俺は愛梨のバッグを見せた。 洋「…えっ…あ…バッグ?…ちょっと待ってろ…っ…」 さすがに妹の忘れ物を引き取らないわけにもいかないだろう。 暫くすると、その玄関のドアが開かれた。 洋「…悪いな……」 俺は玄関から出てきた洋太に無言で愛梨のバッグを差し出す。 洋「…はぁ?…これ……かよ?」 さすがの兄貴も呆れた顔でその渡されたバッグを見ている。 翔「…あり得え…ねーだろ?」 洋「…あぁ……あり得えねぇわ。けど、あいつならあり得るかも…クッ…」 そういうと珍しく洋太は笑った。 学校で洋太の笑う姿など見たことなかった俺はちょっとその意外な洋太の姿に驚いていた。 翔「…まだアイツ……帰ってねーの?」 洋「あぁ。寄り道してくるとかって言ってたからな…」 翔「ばーちゃんの……見舞い……だっけ?」 洋「オマエ…よく知ってんな…」 翔「まぁな。ん、これでも同じ部で同じ跳躍やってるからな。」 そんな俺を洋太はその鋭い目で睨んだ。 洋「…オマエ、まさかとは思うけど……また妹に手ぇ出してなんかいねーだろうなぁ?」
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