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さっきまで笑っていたはずのその洋太の豹変振りに俺は思わず怯んだ。
(…つーか……今にも殴られそうなんだけど……怖ぇ…)
妹絡みとなるといつもこうだ。
(ったく……コイツ、シスコンじゃねーだろうなぁ…)
翔「心配するなって。手なんか出してねぇよ。つーか、出させてなんかくんねーからさぁ…」
出せるものならとっくに出している。
だけど、俺は本気で彼女に惚れてしまったから、彼女が困るようなことは絶対にできない。
洋「…フッ……それならいいんだけどさ。あいつ、付き合ってるヤツいんだよ。小学校から一緒のヤツでな…」
翔「…藤沢……だろ?」
洋「なんだよ。おまえ知ってたのか…」
知りたくなんかなかった。
けど、藤沢のヤツがいきなり俺の目の前に現れて――…
翔「昨年もだけどさ、この前のGWにもうちの学校に来てたからな。オマエの妹の400のコーチなんかしてたぜ?」
洋「え?力が愛梨のコーチ?」
翔「そう。しかもさ、オマエの妹と……なんか見せつけるようなマネしてくれちゃってさっ…ハハッ…」
洋「…力が愛梨に…?」
翔「そっ。なんつーか、あいつら恥ずかしいヤツラだわ。学校だぞ?何考えてんだかなぁ…」
学校で恥ずかし気もなくあんなエロいキスをしていた二人。
そんな二人を目の当たりにして、どうして俺が入り込めるというのだろうか。
(あぁ……思い出すと胸くそ悪りぃ…)
翔「つーワケで俺の入り込む余地なしってトコ。」
洋「…そうか……いや…それなら大丈夫だな…」
洋太は藤沢と妹の愛梨の仲を認めているようだ。
どうやら生粋のシスコンではないように思える。
翔「…オマエ、藤沢とはどういう?」
洋「あぁ…力は俺の弟みたいなもんだな。と言ってもアイツの方がタッパはあんだけどさ。でもさ、アイツにはいろんな意味で俺は感謝してんだよ。」
どうやら、藤沢には信頼をおいているようだ。
(つーか、俺だって身長は高いし、文武両道で通ってるってのに。藤沢がよくって俺じゃダメってのはどういうコトなんだよ…)
洋「まぁ、そういうコトだからさ。オマエ、愛梨を狙うとかやめとけよ!」
言われなくても分かっている。
ていうか、俺に入り込む隙なんて全くない。
翔「まぁ、藤沢相手じゃな。けど、俺よりももっと要注意人物がいんだろ?そっちを気にした方がいいと思うぞ?」
洋「…要注意…って……」
一瞬、洋太の表情が陰ったのを俺は見逃さなかった。
翔「…身に覚え…でも?」
洋「…いや……」
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