兄の思い

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俺は気になっていたあの事を洋太に聞いてみることにした。 あんな大それたことを聞いておいて、見て見ぬフリなど俺にはできない。 翔「…あのさ……ちょっと聞きてーことあんだけど……」 洋「なんだよ?」 翔「ん、単刀直入に聞くけどさ。おまえ……いや、おまえら家族、なんで愛梨に隠し事してんだ?」 やはり身に覚えがあるのだろう。 洋太は顔を顰めた。 洋「…どういう……意味だ?」 翔「俺には関係ないことなのは分かってんだけどさ。けど、俺、聞いてしまってさ…」 洋「…何を……聞いたってんだよ?」 翔「…あいつ…愛梨は……大泉の許婚なんだろ?」 大泉が言っていたことはおそらく本当のことだろう。 だが、俺はそれは何かの間違いであって欲しいと思っていた。 洋太にそれを打ち消す言葉を言って欲しかった。 だが━━… 洋「…それ……まさか…愛梨は知ってんのか?」 それは洋太がそれを事実だと認めた瞬間だった。 大泉の言っていたことに間違いは無さそうだ。 翔「…ん……あいつは知らねーよ。でもな……藤沢は知ってる…」 洋太の顔が一瞬のうちに蒼褪めた。 洋「マジ…かよ…」 翔「…あのさ……おせっかいかもしんねーけど、俺も先輩としては放っておけねぇ部分もあってさ…」 洋「…あ?…放っておけない部分て…何だよ?」 普通の先輩と後輩ならどうでもいい。 だが、同じ部の先輩としては目を逸らせない。 あんな無謀な勝負をしようとしている二人を俺は見ていられない。 翔「藤沢……大泉と走るらしいぞ?」 洋「…は?…どういうことなんだ?」 翔「愛梨を賭けて400でな…」 洋太は言葉を失っていた。 洋「…あいつら……」 洋太にとって藤沢は弟のような存在。  そして大泉とは愛梨同様、幼馴染的存在。 その二人が愛梨を賭けて走るなど考えたくもないだろう。 翔「おまえらがどうもしねーから藤沢が動いたんだよ。あいつ……野球やめて愛梨を守ろうとしてんだぞ?つか、おまえら何で愛梨に黙ってたんだ?」
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