兄の思い

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翔「洋太……藤沢は間違いなく愛梨を守る為に大泉と同じ舞台に上がるよ。」 今頃、藤沢は池川でその準備に取り掛かってているだろう。 もしかしたら監督に引退宣言をしているかもしれない。 だが、おそらくそんなことを監督は許してはくれないだろう。 そりゃそうだ。 野球名門校へ野球をしにいった期待のエースをどうして簡単に手放せるだろうか。 きっと藤沢自身も板挟みで苦しんでいるだろう。 翔「おまえ……このまま見て見ぬフリすんじゃねーだろうな?」 藤沢のことも心配だ。 だが、俺は愛梨のことはもっと心配だ。 愛する人と引き裂かれるかもしれないその現実をもうすぐ見なければいけないのだから。 洋「…んなワケねーだろっ。何の為に俺が愛梨と同じレベルに合わせて高校選んだと思ってんだよ?」 突如放たれたその洋太の言葉に俺は驚いた。 翔「えっ?おまえ、レベル落としてうちに入ったのか?」 洋「…まぁな。じゃないと、俺、あんなレベルの低い学校行かねーわ。」 うちの学校はレベルが低いわけではない。 一応、市内の県立高校だけで言えばナンバー1なのだが。 しかし、俺も成績は悪くはない。 その俺に向かってそんな大口が叩けるということはよほどの成績なのだろうか。 (…ぁ…もしかして、こいつ……) 翔「…まさか…おまえかよっ…俺らの学年でいつもトップとってるバケモノは!」 それが誰だかずっと判明していなかったのだが、ここにきてようやく俺は気づいた。 洋「…他のヤツ等には言うなよ。あんま、そんな目で見られんの嫌だからさ…」 噂はあった。 毎回、県内模試でトップを取っているとんでもねーヤツがうちの学校にいるということ。 それが誰なのか謎だったのだが……まさか、こんな身近なところに謎の秀才がいるとは思いもしなかった。 そうなるとやはりなぜこの秀才がこの学校に来たのかが気になる。 (…まさかっ…) 翔「おまえ……レベルを落としてこの学校に入ったのって、愛梨の…ためか?」 洋「…あぁ……万が一のことを考えて決めた。祐のこととかも……」 いずれくるその日に対して、愛梨の家族も一応警戒はしていたようだ。 翔「それでおまえはボクシング部に入ったとか?」 洋「察しいいな。そういうこと。祐がこの学校に推薦が決まった情報を偶然知ってすぐに野球やめたんだわ、俺。」
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