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洋太が野球をしていたことは知っていた。
しかし、まさか辞めた理由がそれとは驚きだ。
翔「愛梨の言うとおりだな、おまえは…」
洋「えっ?」
翔「あいつ、いつも言ってるぜ?おまえのこと……いい兄貴だってさ…」
俺から見れば洋太は目つきも悪いし厳ついし、かなり近寄りがたい存在。
しかし、同じクラスではあるが、妹が陸上部というだけの接点しかない。
そんな洋太に俺は目を付けられていて、会えばいつもその鋭い目で睨まていた。
愛梨に手を出そうとしている良からぬヤツ……妹に手を出すヤツは絶対に許さないと言わんばかりの目で――
しかし、本当の洋太はやはり愛梨の言うようなヤツなのかもしれない。
洋「…クッ…愛梨のヤツ……分かってんじゃねーかよ…」
そう言って妹を思い浮かべるその表情は俺の知らない洋太だった。
翔「…つかさぁ、意外だったわ。俺、おまえは妹思いっつーより、単なる極度のシスコンだと思ってたわ…ハハッ…」
洋「は?んなワケねーだろ。つーか、俺、一応女いるしな。…ぁ…ヤベッ…」
反論の為に思わず口にしてしまった洋太のセリフに俺は更に驚いた。
翔「えっ?おまえ、そんな怖えー顔して女なんかいたのかよっ?」
洋「うるせーな…」
その時だった。
俺の背後から自転車の音が聞こえてきた。
…ザザァ………シャッ……
振り向くと、そこにいたのは――
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