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その男の言葉が愛梨の心を捕えないわけがない。
愛「…ねぇ…祐が……どうかしたの?…え……ちょっと待って……祐様……様…って…えっ……」
愛梨はかなり動揺していた。
(マズいっ……このままでは愛梨はあのことを…)
俺はそんな彼女の手を掴み取ると自分の方へと引き寄せた。
翔「…愛梨…入るぞ…」
俺は半ば強引に彼女を家の中へ連れていこうとした。
だが、彼女はそれに抵抗するようにして――
愛「…離して……」
その時だった。
『私は祐様の執事の小笠原と申します。愛梨様にどうしてもお願いがあって…』
洋「聞くこたーねーぞ!つーか、愛梨!早く家に入れっつてんだろ!」
愛「…いやっ……私、聞きたいっ……祐のコトなんでしょっ?!」
洋「…ダメだっ!愛梨っ!おまえはもう祐に近づいちゃダメだ。アイツのことは……」
愛「違うのっ!お兄ちゃん、そんなんじゃないの。あれは……祐のせいじゃなかった……あれは……ただ……」
洋「ただ何だっつーんだよ!?おまえは祐にあれだけ傷つけられたじゃねーか!」
愛「…でも、あれは私が祐を傷つけることをしたから…っ…」
今にも泣きそうな愛梨がそこにはいた。
小笠原「申し訳ありませんっ。洋太様のお気持ちは分かります。しかし今は…っ……愛梨様に頼るしかないんですっ!お願いです。私どもと一緒に来てはもらえませんか?」
愛「えっ……それ……どういう……」
洋「ざけんなよっ!誰が行かせるかよ!」
洋太は憎しみにも似た目でその執事を睨んでいた。
翔「愛梨……やめておけっ……洋太の言うとおりだ…」
これほどまでに洋太が怒りをぶつけるということは、これまで愛梨を守る為にどれだけの思いをしてきたのかが俺には理解できる。
小笠原「緊急なんですっ。こんなことをお願いするのは最初で最後になるかもしれません…っ……ですから…っ…」
(最初で……最後!?)
小笠原の目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
愛「…あのっ……説明してもらえませんか?…もしかして……祐に何か…?」
緊迫したその雰囲気はただならぬことが起こったことを示していた。
小笠原「…祐様……祐様が……危篤で……」
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