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小笠原「ようやく祐様が跡継ぎに関して腰を上げた矢先のコトでした。祐様はこの件に関してはずっと拒否されてましたから…」
俺はその小笠原の言葉に疑問を感じていた。
俺に勝負を吹っかけてきたあの日。
祐は自分は大泉グループの後継者だと言っていた。
そして近く発表になるだろう後継者の婚約者が水月であると。
祐自身は大泉グループに何の魅力も感じていなかったようだが、それでもグループの跡取になれば、水月と一緒になれるという条件に祐は跡取の件は納得していた……と俺は思っていた。
だが、今の話から考えると――
力「祐はいつ跡継ぎのことに腰を上げたんだ?」
小笠原「本当に数日前です。GWが終わって少ししてからのことでした。祐様が社長に話がしたいと言い出しまして。それで、本日、正式にそれを引き受けると社長に申し出たのですが…」
そうなるとやはり祐はあの日まで後継者を引き受けていなかったことになる。
あの時点では祐はまだ後継者になるつもりはなかったのだろう。
だが、その後継者問題を絡めて祐は俺に勝負を吹っかけてきた。
大泉グループという権力を使えば、水月なんて簡単に手に入る。
それなのにどうして祐はその権力を最大限に使わなかったのか。
わざわざ俺を引っ張りだしてインターハイで勝負などしなくてもその権力で水月をどうにかできたはずなのに。
おそらくだが、祐は俺が水月にふさわしいのかどうかをその勝負で見極めようとしていたのではないかと俺は思っている。
ずっと大切に想ってきた水月に対して俺がどれくらい真剣なのかをその走りで確かめようとしていたのかもしれない。
祐が全てを賭けるように俺にも全てを賭けられるほどの想いがあるのかと――
そしてアイツは俺がこの勝負にのってくるということも想定していたはず。
祐は俺の性格を知り尽くしている。
俺がギリギリの限界になると、それ以上のチカラを発揮するということも。
全ては祐の計算された策だったのだろう。
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