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水月はその瞳にうっすらと涙を浮かべて言った。 愛「正直言うとね、私、祐の許婚だったこと……もっと早くに知りたかった…」 その彼女のセリフに俺は心臓が止まりそうになった。 力「もっと早くに知っていたら……おまえは…祐を…?」 愛「…分かんない。でもね、私、今は力が好きなの。どうしても……力じゃなきゃダメなの…」 そう言って俺を見つめる彼女は嘘をついているようには思えなかった。 力「…俺だって……おまえじゃねーとダメなんだよっ……」 俺は水月が祐のことを想っていた時もずっと彼女を傍で見てきた。 親友の女なんて好きになってはいけないと思いながらも、傍にいるとどんどん彼女に惹かれていった俺。 突き進みそうになる彼女へのその想いを俺は何度となく封印した。 それは単なる俺の片想いで終わるはずだった。 俺は親友だった祐がいつか必ず水月を迎えにくると思っていた。 絶対に手に入らない、俺の親友の大切な女。 それならば、俺は祐が迎えにくるまで彼女に寄りつく他の男から守っていてやろうと決めた。 今も変わらずだが、当時も彼女はやたらとモテていた。 そんな彼女のボディーガードを気どっていた俺だったが、それは単に俺が水月の傍にいたかったからだということを俺は後になって気づいた。 当時、俺は水月に近づく男連中が許せなかった。 たぶん、あの時点で俺は水月に完全に惹かれてしまっていたのだろう。 しかし、中学二年の県大会の時、祐と水月の『絆』が俺の目の前でプツリと切れた。 そして、この時、俺はそれまで封印していた彼女への想いを解いた。 それから一年が廻った卒業式の日に俺の想いがようやく水月に届いた。 水月は俺を好きになったと言ってくれた。   だけど、彼女は祐を完全に忘れてはいないとも言い―― でも、俺はそれでもいいと思った。 祐との『絆』はもう切れてしまったのだから。 もう二人が前のように戻れるわけがない。 だったら俺が忘れさせればいい。 水月の中から祐という存在をかき消すくらいの存在になってやるとあの時の俺は誓った。
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