必然の出逢い

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小笠原の案内した部屋へ入った俺はまた度肝を抜かれていた。 (つーか……またこの部屋は一体何だってんだ?) 英国調の雰囲気のその部屋―― 部屋の中央には大きな円卓が置かれ、今にも何かの会議が行われそうだ。 そして奥には何故か騎士道を思わせる鎧が二体飾られている。 (誰の趣味だよ、これっ…ていうか、ここ完全に病院じゃねーし…) 小笠原「お部屋がこちらしか空いておりませんでしたので…」 そう言って小笠原はその円卓の椅子を引いた。 力「…いいよ。そんなことより…」 座ってノンビリ話している場合ではない。 俺は早く小笠原に真相を聞きたかった。 小笠原「私で分かる範囲でよろしければ何でもお答えしますが…」 執事というくらいだから祐のことは大体把握はしているはず。 俺は期待半分、不安半分で小笠原に問いかけた。 力「あのさ、俺、祐に陸上の勝負吹っ掛けられてたんだけどさ…」 小笠原「存じております。インターハイで勝負をして祐様が勝てば力様は愛梨様から手を引いてくださるというものですね?」 小笠原のその言葉に俺はカチンときた。 (手を引くって……なんだ…それ。そもそも水月は俺の女なんだからそんな言い方されるのは筋違いっつーか……) けど、大泉側からすれば、俺は跡取の『婚約者を寝取った酷いヤツ』なんだろうし、そういう言われ方をされても仕方ないのかもしれない。 (…つか、こんなコトでいちいちムカついても仕方がないか…) 力「で……勝負することになってたんだけどさ、それなのにまだその話をして二週間も経つか経たないかってのに祐が前言撤回するとか言ってたみたいなんだけど?」 小笠原「…前言…撤回……」 力「勝負もしていねーのに今日いきなり婚約取りやめにするとか、跡を継ぐとか意味わかんねーんだけど…」 あまりに急展開過ぎるその祐の言動を俺はさっぱり理解できない。 もちろん、俺と水月のことを認めてくれたということが本当ならば有難い。 だけど、婚約を取りやめたということは俺は祐と勝負をする意味がなくなったわけで―― しかも、祐は水月が婚約者でなくても大泉グループの跡取りになるとか。 力「水月が婚約者でなくなったのなら跡取りになんかなる必要ねーだろ?なのに…」 小笠原「でしたら、祐様に愛梨様を譲って差し上げては如何ですか?」 力「…は?譲れるワケねーだろ。あのさ、水月の気持ちが祐にねーのに渡せるわけなんかないっての。」 小笠原「…冗談です。…いえ、冗談というか、願望ですかね、私の……」 力「願望?」 小笠原「あまりに祐様が不憫だと思っていたものですから思わず…」 そう言って小笠原は悲しそうに苦笑いを洩らした。
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