必然の出逢い

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小笠原「本当に祐様はお可哀想です。」 小笠原は祐を傍で見てきたからその思いが分かるのだろう。 小笠原「もっと早くに社長が愛梨様との婚約の話をされていたら、祐様はあんなにも苦しむことはなかったでしょう。本当でしたら今、ごく自然に愛梨様は祐様の傍にいたはずなんですから…。力様ともこのようなカタチにはならなかったはずですし。気づいていた私がもっと早い段階で社長にお願いしていれば……」 小笠原のその表情は自分を責めているようだった。 力「そもそもさ、祐と水月は何で婚約してんだよ?祖父さん同士の話でその婚約は決められたって聞いたけどさ……」 俺に言わせれば、何で祖父さん同士で決められた結婚なんかしなけりゃいけないのか分からない。 しかも孫の結婚に口出してくるとか今どきあり得ない。 小笠原「…力様は……祐様から何も聞いては?」 力「詳しいことは……聞いてねーよ。」 祐の祖父さんが水月の祖父さんに借りがあるとかないとか。 水月が持っているだろうおまもりの中に正式な文書があるとか。 俺が聞いているのはその程度だ。 小笠原「…そうですか。では、力様には説明しておく方が良さそうですね…」 小笠原は思い出すかのようにそれを話し始めた。 小笠原「祐様のお祖父様の社長と愛梨様のお祖父様が幼なじみだという話は聞いておりますか?」 力「あぁ。確か同郷なんだろ?」 小笠原「はい。お二人は小さい頃から非常に仲がよろしかったらしく、大人になってからもそのつきあいは変わらなかったそうです。社長は大泉グループの跡継ぎとしてそれは堅苦しい環境で育ちました。そんな社長に近寄る方々はやはりあまりよろしくない方が多く。そんな中、愛梨様のお祖父様は唯一社長が心を許せるお方でした。そんなある日、社長のご子息である祐様のお父様がグループの跡継ぎになることを拒否されまして……」 力「その話……祐に聞いた。で、祐の母さんが間に入ったんだろ?」 確か祐の話では、祐の母親が一役をかったとか言っていた。 小笠原「その通りでございます。当時、既に社長の奥様は他界しておりまして、社長はご子息である祐様のお父様『祐人(ヒロヒト)様』をそれは頼りにしておりました。しかし、どうしても跡を継ぐには荷が重過ぎると祐人様は社長に跡継ぎになることを拒否されました。そして、それから間のなくして祐人様は社長の元から去って行かれました。祐人様にはお心に決めた方もおられましたし……」 力「…祐の母さん……だよな?」 小笠原「はい。しかし、当時、社長は奥様のことを認めようとはしませんでした。家柄をかなり気にしてということもありました。祐人様には既に決められた婚約者がいたそうです。もちろん、祐人様はそんな結婚は嫌だと……」 祐の父さんもまた勝手に許婚を決められていたという事実。 かなり時代を感じる。 しかし、跡継ぎも婚約者も断り、大泉という看板を捨てて親父の元から去っていくというのはかなり覚悟があってのことだろう。 俺の中で祐の親父さんの印象はかなり好印象だ。 小笠原「その後、祐様のお父様と奥様は内々でご結婚なされました。しかし、社長は祐人様が跡を継ぐということを諦めきれず、なんとかグループに戻らせようと様々な手を使いまして……」
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