必然の出逢い

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力「で、祐はその権力を使おうとした祖父さんを止めたんだな?」 小笠原「それが……実は社長は祐様には内密で私どもに愛梨様を連れてくるようにと何度も申されておりまして…」 力「なにっ?」 小笠原「社長は祐様のやり方を表向きでは納得されておりました。ですが、水面下ではいろいろと動いておりまして。私、その件で水月家へは何度も足を運んでおります。」 力「水月の家に?」 小笠原「えぇ。しかし、水月家の方々は反対しておりまして。それでも何度も足を運ぶようにと言われた私どもに遂には愛梨様のお兄様が……」 (まさか……?) 力「洋太さんが…おまえらを?」 小笠原「えぇ。さすがボクシング部でご活躍されているだけあって…」 小笠原は苦笑いをした。 大泉グループであろうとも妹に手をかけようとするものは絶対に許さないというヤツか。 恐るべし、洋太さんだ。 つーか、俺も水月を泣かすようなことをしたら、洋太さんにボコボコにされるんだろうな。 絶対に泣かせないようにしねーとだ。 小笠原「洋太様は愛梨様をお守りする為にボクシングを始めたようですから、それをここぞとばかりに発揮したというところでしょうね。」 驚いた。 洋太さんが水月の為にボクシングを始めたなんて初耳だ。 小笠原「調べによりますと、洋太様がボクシングを始めた時期は、社長が直々に水月家に婚約の件のお話にいった直後。洋太様はそれまでやられていた野球を辞められ、突如、ボクシングを始められたとか。おそらく愛梨様のことを考えてのことでしょう。」 俺も洋太さんがボクシングだなんておかしいと思っていた。 確かに洋太さんは昔っからその目つきはかなり悪く、体型もボクシングをしていても不思議じゃないほどでガタイが良かった。 しかし、洋太さんは野球が凄く好きで、中学の時も朝、夕ともいつも一番先に運動場へ行って、レギュラーだったにも関わらず、後輩だった俺達とグラウンド整備をしたり練習をしたりしていた。 そんな洋太さんに何故、後輩がするべきことをするのかと聞いたら、 『こういうのも嫌いじゃないし、トレーニング兼ねてるから』 と言われ―― 俺はそんな洋太さんを見て、この人は本当に野球が好きなんだなと感心したと同時に、俺も洋太さんみたいになりたいと密かに思っていた。 それなのにどうしてそんな洋太さんがいきなりボクシングなんかと思っていたのだが。 そういうことがあったのなら納得だ。 つーか、やっぱ洋太さんは水月がいつも言っているようにスゲーいい兄貴だ。 力「洋太さんは妹思いなんだよ。しかもあの人、筋が通ってる人だから。そんな洋太さん相手にそんなワケわかんねー話が通じるワケねーだろ?」 小笠原「…そうですね。確かに話になりませんでした。洋太様がいない時間を狙っていつも行っていたのですが、何故か学校に行ってるはずの洋太様がいきなり帰宅されたり。とにかくかなり警戒はされていたようです。」 俺は改めて洋太さんの水月に対する思いを感じた。 (…水月はいい兄貴もったな……)
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