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小笠原「結局、社長は水月家の方々と話をすることができず、今度は愛梨様に直接交渉しようとしたのですが…」
力「…ちょ……水月に……近づいたのかよ?」
小笠原「いえ。最初は愛梨様の一日の動きを見させていただいているだけでした。しかし、祐様がそれに即お気づきになりまして…」
力「…祐が…?」
小笠原「それはかなりお怒りになりまして、これ以上彼女に近づくと後継者になど絶対にならないと。結局、早く愛梨様にお会いしたい社長の思いも祐様はお聞きにならず、自分のやり方で愛梨様を連れてくるから待っているようにと一点張りでした。しかし、力様という恋人が愛梨様にはいて、祐様はかなり苦労されていました。そこで祐様は強引な手に出たようですね。」
力「…俺を……無理矢理インターハイに引っ張りだそうと?」
小笠原「そういうことです。しかし、その直後、祐様と愛梨様の間で何かあったようでして…」
(…何かが……あった…?)
力「それ…どういう…ことだ?」
俺は嫌な予感がしていた。
小笠原「何があったのかまでは存じ上げません。ただ最近、後継者問題で祐様の周りで不審な動きもあるということで、社長の命令で私達は祐様と愛梨様の周辺を見張るようにと言われていたのですが、またしても祐様にすぐに見つかってしまい警護を解除した時がございます。その時に一時ですが祐様と愛梨様のご様子を確認できなかったことがありまして……」
力「その時に祐と水月の間に何かがあったと?」
小笠原「おそらく。祐様はその後、かなり落ち込んでいたように見えました。いつもでしたらそれとなく私もお声掛けするのですが、あまりに真剣に考え込んでおられましたので……」
力「それって……いつだよ…」
小笠原「…連休中ですね。部に行っていた時のことでしょうか…」
俺は祐が俺に勝負を吹っ掛けてきたあの日のことを思い出していた。
あの日、部活を終えた後、水月が前日同様また行方不明になっていた。
もしかするとまた何処かで祐と会っているのではと心配していた。
しかし、暫くすると西野から水月を見つけたと連絡が入った。
あの時、水月は突然生理になったとかでトイレから出られず困っていたと言っていた。
そして、俺の前に出ていくのが恥ずかしいからと帰ってこずに――
それから水月はそのまま西野と生理用品を買いに行くとかで別行動をとることになった。
西野の家で着替えをして旅館に帰ってきた時の彼女の姿。
見慣れないその西野に借りたジャージ姿。
それにかなり違和感を感じていたからあの日のコトは鮮明に覚えている。
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