男のケジメ

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完全に私の気持ちを彼に読まれていた。 力「心配しなくていいって……クッ…」 そう言って力は私の頭にポンッと手を置いた。 愛「ぜ…全然心配なんてしてないし…」 力「…へぇー………ふぅ~ん……」 そう言いながら彼はニヤニヤ私をを見続ける。 愛「…もう……見ないでよ……力のバカ……」 力「…プッ…おまえ分かり過ぎ……」 その時だった。 幸「…え……愛梨お姉ちゃん?……どうして……藤沢…選手と?」 (…あっ……) 私は肝心なコトを思い出した。 幸「お姉ちゃんはお兄ちゃんの婚約者なんでしょ?だから病室にいるんじゃ…」 幸ちゃんも私が祐の婚約者だったことを知っていたようだった。 そんな私が力とこんな会話していたら不審がるのは当然だ。 幸ちゃんは私と力を不審そうに見ていた。 その時、力が彼の方へと私を引き寄せて、 力「あのさ。周りからどう聞いてたか知んねーけど、こいつは今は俺の大事な女なんだよ。卒業したら俺はこいつと一緒になる予定でさ…」 愛「…力…?」 彼は真剣な眼差しで私を見つめていた。 GW中、力とは卒業後についての話をした。 力は卒業後、私と一緒にいたいと言ってくれた。 それがどういう意味か具体的には言ってはいなかったけれど、まさか『一緒になる』とかという意味とは私は思っていなかったから、その彼の言葉にすごく驚いた。 力「何今さら驚いてんだよ?この前も言っただろ?卒業したら一緒にいて欲しいってさ。」 愛「…あ…うん……でも、一緒に…って……」 力「…だから、そう言う意味だって。おまえと一緒になるんだって…」 それは半プロポーズ的なセリフ。 力「まぁ、コイツとの勝負に勝てば……の話だけどな。」 (…えっ……勝負って…) そして、力はその視線を祐へと移して―― 力「…祐……おまえ、俺とインターハイで勝負して勝って水月を取り戻すとか言ってたよな?そんな寝てる場合じゃねーだろ。さっさと目ェ覚ましてその足治してケリつけようぜ!」 彼が何を言っているのか分からなかった。 (インターハイ……?私を取り戻す……?一体……どういうこと?) 愛「…力……ちょ…なん…なの……それ……」 力は申し訳なさそうな顔で言った。 力「水月……悪りぃ。俺さ、こいつと約束してたんだよ。」 愛「約束?」   力「そ。男の約束。ん、ケジメをつけねーとコイツ、おまえを諦めてくれそうになくってさ。俺な、祐に400の勝負吹っ掛けられてたんだよ。」 愛「えっ!?400のって……だって、力は陸上もうやってないでしょ?えっ…野球は?もうすぐ予選なんだよ?」   力「心配すんな。野球は辞めねーからよ。つーか、監督が辞めさせてくれねーからさ。だから両方やる予定だったんだ。」 愛「えっ?両方って……そんな無理だよ。それに、私、そんな勝負嫌だよ。私、モノじゃないんだよ?…酷いよ…二人とも…」
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