男のケジメ

7/9

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/605ページ
力はいつも私を大事に思っていてくれている。 自分のことよりも私のことを一番に考えてくれていて、凄く必死になってくれて。 県大会でもそうだった。 祐に真っ向勝負で挑んで―― そんなひたむきで一生懸命で男らしい彼だからこそ、私は彼を好きになったんだと思う。 愛「…力……ありがとう。でもね、私、そんな勝負なんかしなくても、力のことが大好きだしもう離れないよ?」 力が一生懸命になって私を守ろうとしてくれている気持ちは嬉しい。 でも、私は何があってもこれからも彼から離れるつもりなんてない。 力「俺はさ、祐には絶対におまえとのこと、認めてもらいてーんだ。」 愛「…えっ……」 力「大泉グループの後継者の婚約者を自分のものにするんだぜ?そんな簡単にいくわけねーんだよ。俺がどれくらいおまえに本気かってのをアイツに見せてやんねーと、アイツだって引くに引けねーだろ?アイツの望む『走り』で見せてやんのが一番いいんだって。俺、アイツがどれだけおまえのこと想ってたかなんて分かってっからさ…」 力は力のやり方で何とかしようとしてくれていた。 正直、それは私は凄く嬉しかった。 でも、結局、祐は私と力のことを認めるようなことを言ってくれた。 愛「けど、祐は分かってくれたよ?婚約のことはなかったことにしてくれるって。力とのことも認めてくれるって…」 力「それはさ、おまえと祐との間に何かがあったからじゃねーのか?」 力は見透かすような目で私を見つめていた。 私の胸がドクンドクンと音をたてていく――… 力「おまえ、祐とのことで俺に隠してること何か……あるんじゃねーの?」 彼のその疑いの目から私は彼があの日のことを言っているのではないかと思った。 それでも私はあのコトを言いたくなかった。 愛「…ないよ……」 力「何隠してんだよ?……顔に書いてあるぞ?隠してますってさっ…」 覗き込むようにして彼は私の瞳の奥を見据える。 愛「…か…隠してなんかない……」 でも、その動揺は彼に完全に伝わってしまっているようだった。 力「おまえの嘘なんか俺にはバレバレなんだよ。それにな、俺との約束の直後に祐がこんなにも簡単に勝負を取り消したり、婚約解消するとか言うわけねーんだからさ。」  
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加