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あまりにも冷たい力の言い方に私は思わず彼の腕を掴んだ。
愛「力っ…そんな言い方ってないっ…」
そんな私に力は幸ちゃんにその表情を見えないようにして、少し笑いながらこう囁いた。
力「(いいんだって。この妹にはこれくらいがちょうどなんだって…)」
愛「(…だって……言い過ぎだよ…)」
力「(いいから…っ…)」
小声で力に宥められた私は仕方なくそれ以上は何も言えなかった。
力「ま、そういうワケだからさ、身内でちゃんと見てやることだなっ」
力はそう幸ちゃんに冷たく言い放った。
力「執事さんよー……俺達はとりあえず、外に出ておくわ。友達も待たせているしさ。つーか、アイツら外にまだいんの?」
小笠原「お友達の方にはそれぞれお部屋を用意しまして、今はそちらで休んでいただいております。お二人もお部屋をご案内しますのでどうぞ、こちらへ…」
誘導する小笠原さんの方へと力が足を向けた。
だけど、私はやっぱり祐が気になって――…
無言で願った。
(…祐……頑張って……その走りをもう一度見せて。そのためなら私、何でもするから……だからっ……)
力「…水月?何してんだ?早く来いよ?」
愛「…うん……」
それでも、やっぱり祐のことが心配で私はそこをなかなか動けなかった。
力「…水月……」
私を見つめる彼の表情は少し悲しそうだった。
(…力……)
彼は私の元へとくると私の手を絡めとった。
力「…こいよ……」
その手が……微妙に震えている気がした。
私は思わず彼の顔を見上げた。
彼の顔もまた私と同じで不安に満ちているように見えた。
力「…大丈夫だからさ。絶対に……アイツはこのまま終わらねーよ。だから信じて待とう。」
私もまたそんな彼に大きく頷いた。
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