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力と祐は親友同士だった。
どうしてだか分からないけど、出会った頃の二人の息はピッタリ合っていた。
すぐに自然と打ち解けた二人を私は凄く羨ましく思っていた。
二人の間に入れない空気がそこには存在していた。
それほどに互いの気持ちを理解し合えていた二人。
力「水月、俺はさ、今だから言うけど……おまえのコト、初めて会ったトキから気になってたよ。」
愛「…えっ……」
力「祐の傍でチョロチョロしてたちょっと生意気なおまえにさ……」
そこには頬を少し赤くした力の姿があった。
以前、力のお母さんから少しだけ力の私に対する想いは聞いたことがあった。
でも、彼の口から直接その頃の想いを聞いたのは初めてだった。
何度か彼には『いつから私のことを想ってくれていたの』かと聞いたことがあった。
けれど、いつも力は答えてくれなかった。
だから、きっとこのままずっと言ってくれないのかと思っていた。
なのに、どうして今このタイミングで、彼はそんな話をし出したのか、私は不思議でならなかった。
力「おまえさ、祐のコトとなるとホント必死だったよなぁ。なんつーか、俺に対抗意識燃やしてきやがって、で、挙句の果てには怪我までするし…」
祐は力と出逢ってからというもの少し行動的になった。
休み時間になると祐は決まって力の元へ行っていた。
その入り込めない雰囲気に私は寂しさを感じた。
だから、私は祐を取り戻したくて必死になった。
そして、いつの間にか私はその祐の傍にいつもいる力をライバル視していた。
絶対に負けたくない――…
そう思って、当時やっていた器械体操を使って体育の時間などには力と張り合おうとしていた。
愛「だって…あの時は……」
力「…フッ…まぁ聞けよ。ん、俺な、そんな必死に祐を追う健気なおまえを知らず知らずのうちに自分の目が追っかけるようになっててさ、なんていうか……気になって仕方なかった。」
愛「…え……」
力「その姿がさ、妙に可愛く思えてな。祐の傍にいたらおまえとも一緒にいられるわけで……スゲー毎日が楽しかった。けどさ、気づいたトキには俺、おまえのことを好きになってて……まいったよ。親友の大事な女だろ?何度も奪ってやろうかと思ったトキもあったけどな。でも、俺にとって祐って存在は本当に大事でかけがえなくってさ。だからこそ当時はそんなアイツからおまえを奪うなんてことはできなかった。」
彼のその告白に私は彼がどれだけ祐を大事な存在として見てきたのかをひしひしと感じていた。
と、同時に私への想いも伝わってきて――…
力「それでもさ、おまえにドンドン惹かれていく俺がいてさ。気づいたら、もう気持ちを止めようにも止められなくなってたんだわ…ハハッ…」
愛「…力……」
力「今だから言うけどさ、俺、中学の頃ってかなりツラかったんだぞ?でもさ、おまえが祐を想って笑っているのを見てたらさ、もう仕方ねーなーって。なんつーか、祐のいねー間はぜってー俺がコイツを守ってやらねーとなーって。まぁでも、それはおまえの想ってた相手が祐だったからこそなんだけどな。おまえが想う相手がもし祐じゃなかったら、たぶん俺、マジでソッコーおまえを奪いにかかってたと思うし……」
その言葉に力が私をどれだけ大切に想って傍で見ていてくれたのかを感じた。
力「おまえが俺のものにならなくても、その時はそんなおまえを傍で見ていられたらもうそれでいいやって。だったら中学の間は誰よりもおまえの傍にいたいって思ってさ。それなのに、おまえ、祐にあんな風に傷つけられて。俺な、あの時、おまえのチカラになりてーって思った。スランプに陥ったおまえをなんとかしてやりたいって思ったんだ。だから、おまえのいる陸上部に転部して俺自身は池川を目指すことにしたんだ。」
愛「…え……」
初めて聞いたその事実に私は驚きを隠せなかった。
愛「…ちょっと待って……だ…だって、力、甲子園に行きたかったから池川学院を受験したんじゃ?」
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