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力「俺はさ、もうおまえが祐のことで泣いたりツラい思いをしたりしてるのを見るのは正直嫌なんだ。だから、もし、万が一、祐に何かあったら……いや、あったら困るんだけど……、そんなことになったら俺はおまえをこの先、俺の傍で笑わせてやることができるのかって。おまえにとってどんなことがあっても『祐』って存在はこれからだってスゲー大きい存在ってのは理解ってる。だからこそ、あのままあいつが逝くなんて考えたくねーしあったら困る。おまえの心をこんなカタチで祐にもってかれるなんて俺は絶対に嫌なんだ。」
力はその唇を噛み締めた。
愛「…力……」
力「だから、俺は絶対にあいつには復活してもらいてーんだ。もう一度アイツとちゃんと勝負して勝ってからちゃんとしたカタチでおまえを手に入れたいし、できることなら俺もアイツとまたフツーに話もしたい。昔のような関係にも……な。」
そう言って力は悲しそうに笑った。
力「さっきは妹の幸にあんなコト言ったけどさ、俺、本当は祐がおまえを必要としてるんだったら今はアイツの傍にいてやって欲しいって思う。アイツをさ、おまえのチカラで助けてやって欲しいんだ。」
きっと力は祐と拗れてしまったその仲をできることなら元に戻したいとずっと思っていたのかもしれない。
二人の仲をこんな風にしてしまったのはきっと私のせいだ。
だったら私は――…
愛「…うん。私なんかでいいんだったら何でもするっ…」
今、私ができること。
それが祐の傍にいることならばいくらでもいようと思った。
力の為にも私は今できることを精一杯しなきゃいけない。
力「…ありがとな。なんやかんや言っても俺、祐のことは嫌いになんかなれねーんだよ。ん……おまえも…じゃね?」
力は意味深な顔で私を覗き込んだ。
そして、その直後、力の口から衝撃的な言葉が発せられて――
力「…おまえ……祐に…どんな酷いことされても、アイツを嫌いになんかなれなかっただろ?」
苦しそうな表情をして私を見つめるその目に私はそれがどういう意味なのかを確信してしまった。
何もかも見透かしたような力のその目。
(力は…知っているんだ…あの日のコトを…)
その瞬間、あの日の出来事が鮮明に私の脳裏に浮かび上がってきた。
祐の私に対するその強い想いを嫌というほど刻み付けられたあの出来事を。
それでも私は彼のことを憎めなかったし、嫌いにもなれなかった。
むしろ、祐に対して申し訳ないことをしてしまったという罪悪感。
彼を追い詰めたのは私の心変わりが原因なのだと気づかされた。
祐を嫌いになれたらどれだけラクだっただろうか。
でも、嫌いになんかなれない。
私にとって祐は特別な存在で大事な人。
けれど、彼の気持ちに私は応えられそうにない。
どんなに想いをぶけられても私の脳裏には力がいる。
私は彼が好きだ。
この目の前にいる人が―――
愛「…力………私……」
その時だった。
彼は信じられない言葉を口にした。
力「…俺の為に……ごめんな…」
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