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力はやはり全てを知っていた。
愛「…ごめ……黙ってて……ぅ……ぁ……」
知られてしまったということよりも、それによって彼を傷つけてしまった事に申し訳なさを感じた。
こんな大事な時期なのに私は彼に迷惑をかけてしまった。
謝っても許されないその事実――
絶対にあっては知られてはいけないことだったのに。
力「…ゴメンな……酷い目に合ったんだろ……河合らに聞いた…」
愛「…先輩……が……?」
力「ん…誤解すんなよ?アイツらが悪いんじゃない。俺が無理矢理吐かせたんだ。」
愛「…力が……?」
力「さっきも言ってたけどさ。やっぱ、俺はおまえと祐の間に何かあったんじゃねーのかなーって思っててさ。で、カマかけてあいつらを問い詰めたんだ。そしたら…な…」
力は鋭い人だと思った。
人のちょっとした言動から、いつも何かを感じ取ってしまうのだから。
力「言えるワケ……なかったんだよな?」
私を責めるワケでもなく、ただ彼は申し訳なさそうに私を見つめていた。
力「…ん、理解ってっから。俺さ、正直、祐がおまえにしたことは腹が立つよ。でもな、祐がおまえにそんなコトをするってことは、それだけアイツがおまえのことを本気で想い続けてたってことだから…」
そう言って力は悲しそうに笑った。
力「俺、おまえを責める気なんて全然ねーから。むしろ責めるなら自分だって思ってる。」
愛「…え…どうして…?…力は何も…」
力「水月。俺はさ、あの日のことは俺にも責任があるっ思ってんだ。GWの時、俺、祐に対抗してかなりあいつを挑発しただろ?余裕な顔してる祐に分からせてやりたかったんだ。おまえはもう俺のものなんだって。けど……やり過ぎた…」
GW中、力と運動場の木陰で休憩していた時のこと――
私は偶然にもトラックにいる祐の姿を見つけてしまった。
相変わらず綺麗なフォームで走る祐の姿に目を奪われていた。
そんな祐とふと目が合った。
見つめるその瞳に吸い込まれそうになる私。
そんな私に気づいた力は交わるその視線を遮るかのようにキスをしてきた。
学校だというのに力はそんなことおかまいなし。
人前を恥ずかしがる私を身動きできないようにして激しく唇を重ねてきて――
力「おまえをそんな目に合わせたのは俺なんだ。だから…ごめんな。」
そう言って力は私を囲うようにして私の頭に顔を埋めた。
愛「…そんな…謝らないで……違うっ……力は悪くない…っ…」
力「…いや、俺が悪いんだ。ん……カラダ……あの後、何ともなかったか?」
私が悪いのに自分を責めばかりする力に申し訳なくて仕方がなかった。
そして私のカラダにも気遣ってくれるなんて――…
愛「…大丈夫……」
力「そっか……ん……良かった。いや、良かったってのはどうだろうな。まぁ、おまえのカラダは俺が隅々までチェックしてやるから……クスッ…」
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