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そして、俺は小笠原にまた病室の隣にある部屋へと連れてこられた。
力「で、祐の具合はどうなんだよ?」
小笠原「それが、さきほど電話した直後から心拍数にかなり変化がございました。一時危険な時もあり、急遽、主治医に来てもらい様子を見てもらっていたのですが、愛梨様がもうすぐ来るということを私が祐様にお伝えしたところ、祐様の心拍数がまた安定しまして……。ですが、主治医の話ですと、まだ予断を許さない状況とのことですので、可能であれば、愛梨様にはもう少しいてもらえればと思うのですが……構わないでしょうか?」
命に関わるときにさすがに俺もノーとは言えない。
それに彼女自身もそれを望んでいるようだから。
力「別に構わねーよ…」
小笠原「申し訳ありません。ご迷惑をおかけするのですが…」
その時だった。
突然、ドアの向こうからノック音が聞こえた。
小笠原がすぐさまその方向へ向かうとそこには祐の母親がいた。
小笠原「奥様……」
祐母「小笠原さん、ちょっといいかしら?」
そういうと祐の母親は車椅子を自分で動かしながら俺の元へとやってきた。
祐母「さっきはごめんなさいね。気づかなくって……力君……よね?」
力「あ…はい…」
さっきは水月しか見えていなかったのだろうか。
俺の存在に今しがた気づいたようだ。
祐母「力君……祐の為にわざわざ来てくれたのね?」
力「えぇ…まぁ……」
ここに来たのはもちろん祐の具合が気になっていたからだ。
だが、俺は水月のこともまた気になっていた。
祐母「噂には聞いていたけれど……力君、甲子園目指しているんですって?」
力「あぁ……はい……まぁ……」
祐母「凄いわね。小さい頃から野球が凄く上手だったけど、ずっと続けて頑張ってるなんて……偉いわぁ……」
まるで子供を相手にするかのような話し方。
(俺は水月とは違ってガキじゃねーんだけどな…)
力「いえ……まぁ、馬鹿のひとつ覚えみたいなもんなんで…」
祐母「そんなことないわ。祐も凄く感心していたのよ。そういえば……中学の時は陸上をしていたのよね?」
力「いえ……まぁ、一年間だけ…」
祐母「まぁ……それなのに?全国大会まで行ったって祐から聞いていたのだけど。やっぱり力君は祐の言っていたとおりね。本当に運動神経が凄く良くって。しかも頭もいいものね?池川ですもの。もちろん……彼女もいるんでしょう?」
それは今、俺が一番答えにくい質問。
俺は焦った。
力「えぇ……まぁ…」
(ていうか、俺の彼女って水月なんだけど……)
祐母「…ふふ……私の知っている子……かしら?」
力「…っ……」
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