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その笑顔からいって悪意はないのだろうが俺は少し堪えた。
(……つーかどう答えればいいんだよっ…)
その時、小笠原の険しい視線が感じられた。
(『言うなっ』……ってか?!)
この場合言うべきではないことは分かってはいる。
だが俺は複雑だ。
力「どう…でしょうね……ハハッ…」
笑って誤魔化すしかなかった。
そんな俺の気持ちなどお構いなしに祐の母親は更に話を続ける。
祐母「今も祐が力君と愛梨ちゃんと仲がいいなんて本当に嬉しいわ。今日も二人が来てくれるなんて……あの日に戻ったみたいで……」
戻れるものなら俺もあの頃のような関係に戻りたい。
だけど、あの時と全く『同じ関係』には戻りたくはない。
そうなると、俺が水月を諦めなければならないのだから。
祐母「さっきね、愛梨ちゃんが祐のところにいって祐の手を握ったのよ。そしたら不思議なことに祐の手が少し動いたの。愛梨ちゃんを待っていたかのようにその手を握り返してね。あんなコト幸には一度もしなかったのに…やっぱりあの子には愛梨ちゃんがいないとダメなのね……」
奇跡のようなその出来事に祐の母親は感動を覚えていた。
祐母「力君は祐と愛梨ちゃんが婚約してること、知ってるの?」
(知ってるっつーか……解消したことも知ってるけどな……)
だが、そんなコトを言えない俺はこう答えるしかない。
力「…はい……」
これじゃぁ、俺が祐と水月のことを認めてるみたいだ。
俺は凄く空しくなった。
そんな俺に祐の母親は思いも寄らないことを話しはじめた。
祐母「正直言うとね、二人の婚約を義父と愛梨ちゃんのお祖父さんが勝手に決めたこと……私、あまりよく思ってなかったの。」
力「えっ?」
祐母「愛梨ちゃんのことは凄く好きなのよ?でも、二人が想い合ってたのって本当に小さい頃のことでしょ?いつまでもその気持ちが同じとは限らないし、それに祐と愛梨ちゃんはもうずっと離れていたから、祐が愛梨ちゃんを想っていたとしても愛梨ちゃんが祐のことをずっと想ってくれてるとは限らないんじゃないかって…」
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