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祐の母親は話を聞く限りでは常識のある人のように思う。
そんな人がそれを受け入れざるを得ない状況になったのには何かしらの事情があったとしか思えない。
力「あの……俺、最近まで祐が大泉グループの後継者って知らなかったんですけど、どうして祐が継ぐことに?流れから言っても何か違うというか……それに二人の婚約だって勝手に…」
その時、小笠原から鋭い視線が送られてくるのを俺は感じた。
どうやら踏み込むなと言うことらしい。
祐母「…小笠原さん、いいのよ。力君がそう思うのも当然だわ。」
そう言って思いの外、祐の母親は俺に話し始めた。
祐母「義父が祐の婚約を決めたことを知った夫は凄く怒ったわ。そしてすぐに夫はその撤回を求めに行ったの。未来ある二人の人生を勝手な大人の都合で振り回すなって。息子の人生をそんな風に弄ばれるくらいならすぐにでも自分が後継者になるって…」
力「…一度は引き受けたんですよね?」
祐母「…そうね。もちろん、義父は喜んだわ。息子の祐人さんがすぐにでも後継者になるっていうのだから。私も複雑な気持ちだったけど……でもこれで祐人さんが義父と大泉と決別しなくて済むって……安堵したの。」
俺には姉貴がいる。
だが、やはり跡継ぎは男である俺だ。
俺も幼い頃から周りから跡取りだと期待されていたから、その息子に賭ける祖父さんの気持ちも分からなくはない。
祐母「私達、義父の反対を押し切って一緒になったの。でも、そのせいで祐人さんに凄く辛い思いをさせてしまってね。…申し訳なくて、祐人さんに知られないように何とかしようと、私、義父と祐人さんが和解できるよう交渉してたの。でも、義父はやっぱり私達を許してくれなかった。そんな時に義父からある条件を出されたの。『男の子が生まれたら祐人の代わりにその子を後継者に…』って。凄く悩んだわ。でも、その時はその条件をのむしかないと思ったの。そうじゃないとい祐人さんと義父は……」
祐の母親はとにかくなんとかしたかったのだろう。
自分と駆け落ちさせてしまったせいで、夫に辛い思いをさせ、親との縁を切ったような状態にさせてしまったということを。
祐母「だったらコドモを作らなければ……男の子を生まなければって思ってたの。でも、まさかその直後、祐が……男の子が生まれるなんて…っ…」
運命ってのはどうしてこんなに皮肉なのだろうか。
タイミングが悪いにも程がある。
祐母「運命を恨んだわ。でも、祐が生まれてくれたおかげで私達夫婦は義父に許されたの。義父はとにかく祐のことを可愛がってくれた。後継者とかそんなものを口に出すこともなく、ただ孫を可愛がる一人のお祖父ちゃんとして……。でも、後継者問題が活発化していく中、ある日、事件が起きたの……」
力「事件……?」
祐母「祐人さんが後継者を引き受けたという話がグループ内に広まった矢先のことでね。祐人さん……命を狙われたの。今回の祐と同様…」
力「…で、祐の父親は?」
祐母「大丈夫だったわ。でも…」
力「でも?」
祐母「愛梨ちゃんの……お祖父さんが……」
そういうと思い出したように祐の母親は涙を零した。
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