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小笠原「祐人様はそのことがあり、かなりショックをお受けになっておりました。そして結局、グループを継ぐことをお辞めになってしまいました。もちろん、社長も引きとめました。しかし、自分の為に亡くなった、ずっと尊敬してきた愛梨様のお祖父様のことを思うととてもそんなことを引き受けられる状態ではなくなりまして…」
力「で、その矛先が祐に変わったってのか?」
小笠原「社長もまた自分の息子の為に親友の命を絶たせてしまったことを悔いておりました。ですから、祐人様を無理強いすることはできないと。それならせめてその親友との約束は絶対に守りたい、親友が大切にしていた孫の愛梨様を何としてでもお迎えして償いがしたいと……」
力「だから…水月を?」
小笠原「そうですね。そのお話を……社長の傍にいた私がもっと早く祐様にお伝えしておくべきでした。しかし、祐様には自分が大泉グループのご子息であることすらお伝えしていませんでしたので……本当に悔やまれます。」
祐母「小笠原さん……ご自分を責めないで……」
小笠原「…ですが……私が……」
祐母「あなたのせいじゃないわ…」
不運にも自分たちの為に命を落としてしまった親友。
その申し訳なさから祐の祖父さんは親友の孫である水月を大泉へ迎えいれようとした。
そして彼女を迎えることで祐もまた幸せになれると踏んだ。
幼い頃の二人の思いがそのまま続いていたのなら問題はなかった。
だけど俺が――…
祐母「力君、祐にはね、夢があるの…」
力「アスリートになりたいってヤツですか?」
祐母「そう。でもね、それは大泉を継いだら叶わない夢なの。だからその夢が叶わなくても、その夢を追いかけさせてあげたい。高校卒業するまではあの子の自由にしてあげたいって私達は思っててね……」
母親の息子に対する思い――
祐を後継ぎにせざるを得ないその後ろめたさから、せめて祐にはその日まで自由にさせたかったのだろう。
小笠原「社長は祐様のあの生まれつきの冷静さと判断力はグループのトップになるにふさわしいといつもおっしゃっております。ですが、祐人様は息子には後継者としての道は進ませたくないと。しかし、社長はやはりこれまで築き上げてきたグループを身内以外に譲ることはできないと…」
祐母「でもね、やっぱり大人の事情で祐の人生を決めてしまうのは可哀そうだと思ってね。だから、あの子には私も祐人さんも『大泉は継がなくていい』『自分のやりたいことをしなさい』と言ったの。でも、あの子は『それじゃぁ、祖父さんと父さんがまた仲違いになってしまう』からと心配して……」
自分がそれを背負うことで親が辛い思いをしなくて済むのならとそれを引き受けようとした祐。
自分を育ててくれた親が辛い思いをしているのを見ていられなかったのだろう。
それほどに祐は両親を大切に思っていた。
祐が根はいいヤツということは俺だって知っている。
だけど、そこまで子供がしなくちゃいけないって……
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