王子帰還!?

3/12
前へ
/605ページ
次へ
祐父「おまえはそろそろ帰りなさい。病院側も心配しているだろうから。後は私が見るから大丈夫だ。」 祐のお母さんは夜中に祐が危険な状態に陥ったということもあり、ガンセンターの医師に無理を言って抜け出してきていた。 祐母「…そうね……じゃぁ……後は頼もうかしら…」 祐父「じゃぁ、ちょっと待ってて……今、迎えを呼ぶから……」 そういうと祐のお父さんは外へ出ていこうとする。 そんなお父さんに私は声をかけた。 愛「あのっ……」 祐父「…ん?どうしたんだい?」 祐のお父さんが私の方を振り返った。 愛「私……祐の傍にいますから、お父さん、お母さんの傍に居てあげて下さい。」 なんとなく、祐のお母さんを一人でその病院に帰してはいけないと思った。 きっと、祐のお母さんだってまだ自分の体に不安はあるはず。 だったら一番安心できる人が傍にいた方がいいんじゃないかって。 祐母「愛梨ちゃん……ありがとう……でも、私は大丈夫よ。」 愛「でも……」 その時、私の方へ祐のお父さんが近づいてきた。 祐父「…いや、有難いよ。私も妻が心配でね。」 そう言って祐のお父さんはお母さんに微笑んだ。 祐父「こんな後だからこそ、私も妻の傍にいてやりたい。それに祐も大切だが、私にとって一番大切なのは妻だから…」 祐母「祐人さん……」 祐のお父さんのその言葉に涙ぐむ祐のお母さん。 愛し合う二人の姿を見た瞬間だった。 祐父「祐には愛梨ちゃんがいる。だから安心だ。愛梨ちゃん…頼めるかい?」 愛「はい……私、ちゃんとみてますから…」 祐父「ありがとう……でも、くれぐれも無理はしちゃだめだよ?」 そういうと祐のお父さんは私に微笑み、お母さんの車椅子を押してドアの外へと消えていった。 祐のお父さんとお母さんが去った後、私はベッドの傍の椅子に座り、祐の姿を見つめていた。 穏やかな顔をして眠っている祐――― 愛「祐……良かったね…」 私はそんな祐の手を握りしめた。 その手は温かかった。 (祐は生きてる……ちゃんと生きているんだ…) 昨日、祐に抱きしめられた時に感じたものと同じだった。 その手から感じる温かさをもっと感じたくて、私は更に彼のベッド近くへと椅子を近づけ座りなおした。 そして、その手を両手で挟むようにして、頬を近づけて――…… ようやく訪れた安心感。 その安心感から眠気を誘われた私は彼の手を握りしめ、そのまま眠りに落ちていってしまった―――
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加