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祐父「おまえはそろそろ帰りなさい。病院側も心配しているだろうから。後は私が見るから大丈夫だ。」
祐のお母さんは夜中に祐が危険な状態に陥ったということもあり、ガンセンターの医師に無理を言って抜け出してきていた。
祐母「…そうね……じゃぁ……後は頼もうかしら…」
祐父「じゃぁ、ちょっと待ってて……今、迎えを呼ぶから……」
そういうと祐のお父さんは外へ出ていこうとする。
そんなお父さんに私は声をかけた。
愛「あのっ……」
祐父「…ん?どうしたんだい?」
祐のお父さんが私の方を振り返った。
愛「私……祐の傍にいますから、お父さん、お母さんの傍に居てあげて下さい。」
なんとなく、祐のお母さんを一人でその病院に帰してはいけないと思った。
きっと、祐のお母さんだってまだ自分の体に不安はあるはず。
だったら一番安心できる人が傍にいた方がいいんじゃないかって。
祐母「愛梨ちゃん……ありがとう……でも、私は大丈夫よ。」
愛「でも……」
その時、私の方へ祐のお父さんが近づいてきた。
祐父「…いや、有難いよ。私も妻が心配でね。」
そう言って祐のお父さんはお母さんに微笑んだ。
祐父「こんな後だからこそ、私も妻の傍にいてやりたい。それに祐も大切だが、私にとって一番大切なのは妻だから…」
祐母「祐人さん……」
祐のお父さんのその言葉に涙ぐむ祐のお母さん。
愛し合う二人の姿を見た瞬間だった。
祐父「祐には愛梨ちゃんがいる。だから安心だ。愛梨ちゃん…頼めるかい?」
愛「はい……私、ちゃんとみてますから…」
祐父「ありがとう……でも、くれぐれも無理はしちゃだめだよ?」
そういうと祐のお父さんは私に微笑み、お母さんの車椅子を押してドアの外へと消えていった。
祐のお父さんとお母さんが去った後、私はベッドの傍の椅子に座り、祐の姿を見つめていた。
穏やかな顔をして眠っている祐―――
愛「祐……良かったね…」
私はそんな祐の手を握りしめた。
その手は温かかった。
(祐は生きてる……ちゃんと生きているんだ…)
昨日、祐に抱きしめられた時に感じたものと同じだった。
その手から感じる温かさをもっと感じたくて、私は更に彼のベッド近くへと椅子を近づけ座りなおした。
そして、その手を両手で挟むようにして、頬を近づけて――……
ようやく訪れた安心感。
その安心感から眠気を誘われた私は彼の手を握りしめ、そのまま眠りに落ちていってしまった―――
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