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暫くしてその笑いが収まると力は真剣な顔で私に言った。
力「水月。俺さ、祐と話がしてーんだけど……ん……おまえ、ちょっと席外してくんねぇか?」
愛「えっ…話……って…」
力「まぁ、男同士のっつーか……俺等もこんな風に話すのって久しぶりだろ?その……いろいろあんだよ…」
男同士の話。
親友だった二人にはきっとこれまで話したくても話せなかったことがあるのだろう。
愛「分かった。いいよ。」
力「悪いな。」
申し訳なさそうな表情で力は私を見つめていた。
でも、その表情の中に何かまた違った感情も見えるようで――
祐「えっ……何?愛梨に聞かれちゃ困るような話するの?…そっか…んー…そんな話、久しぶりだよね。」
私に聞かれちゃ困るようなって一体どんな話なんだろうか。
やっぱり、男の子独特の話なのかなぁ。
力「そうだな。小学生以来か。まぁ、男同士の話は女が入っても理解なんてできねーしな。とりあえずおまえには入る幕なんてねーってとこだな。」
その彼の言葉に私は少し淋しさを覚えた。
小学生の頃――
私から段々と離れて祐が力とばかりいるようになったあの頃がフラッシュバックする。
(…なんか羨ましいや……)
除け者扱いをされたように思ってしまった私は少しだけ落ち込んでいた。
そんな些細な心の内側に祐は気づいたようで――
祐「…力……そんな言い方はないんじゃないかな?そんなんじゃそのうち、愛梨に愛想つかれちゃうよ?まぁ、もっとも……その方が俺は助かるけど…」
力「…は?ちょ…おまえ…」
祐「小学生の頃と全く変わってないよね。力は女の子の扱いがヘタ過ぎだよ。もっと女の子は優しく扱ってあげないと。ん、愛梨だってその方がいいよね?」
その祐の言葉に思わずコクリと頷いてしまった私。
力「…水月……おまっ……」
力のその顔が少し怖くて思わず私は後ずさりしてしまう。
祐「ほら、愛梨を睨まないっ。愛梨の本音だよ。っとに、力は…もっと愛梨に優しくしてやってよ。」
力「つかさぁ、おまえ、いつからそんなタラシみてーなコト言えるようになったんだよ?おまえだって、水月に冷てーこと言いまくりだったじゃねーかよ!」
確かに力と出逢ってからの祐は私への対応を一転して学校では凄く冷たくなった。
でも、それは祐があの時、凄く照れ屋だったから仕方がないと思っていた。
祐「だからだよ。俺、凄い後悔したからさ。力には後悔して欲しくないんだ。」
力「…祐……」
そこにはもう既に私の入っていけない雰囲気があった。
愛「私、外に出てるから……」
二人ともに視線を送って頷いた私。
きっと今の二人ならあの頃に戻れる。
私はそれを信じて病室を後にした。
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