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そして、中学三年の県大会を向かえた。
野球部から陸上部へと転部した俺は、水月とともに祐も出場しているだろう県大会へ出場した。
そこで再会した祐は、前年のあの冷酷だった祐とは一変していた。
試合前に話したその会話から、俺は祐がまだ水月を想い続けていることを確信した。
俺は戸惑った―――
だけど既に遅かった。
水月と出逢ってからずっと心に秘めていた俺の彼女に対する想い。
その想いが俺の中から既に溢れ出してしまっていたから。
その時の俺は、祐のどんな言い訳も聞ける状態ではなかった。
あの出来事を乗り切ろうと、必死で前を向いて歩いてきた水月。
彼女の傍にいて彼女を見守り続けた俺。
その一年を簡単に祐に崩されたくないという強い思いが働いた。
だけどいろんな思いが過る。
そして賭けに出た。
俺たちは同じ100m決勝で争うことになった。
その勝負に俺の水月を想うその気持ちを全力でぶつけ命運を賭けた。
そして、僅差だが俺がそれに勝利した。
試合前、俺は水月に『俺が勝ったら祐のことを忘れて欲しい』と言っていた。
それは俺なりの彼女への告白のつもりだった。
しかし、彼女はそんな俺の気持ちに気づかなかった。
そんなもどかしい思いもしたが、卒業式の日にその想いは思いもよらないカタチで彼女に届いた。
彼女もまた俺のことを好きだと言ってくれて―――
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